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これは、半魔の双子兄弟と世界を回る旅の道中を切り取った話。
とある国で、私達は夏の繁華街を歩いていた。
「あつい……」
「言うな、余計暑くなるだろ……」
私の呟きに、ダンテがうんざりといった様子で返す。
共に並んで歩くバージルは無言だったけれど、彼も額に汗を浮かべていた。
彼も暑いものは暑いらしい。
真昼間の炎天下、眩い太陽光が私達を焼き殺そうとしている。
アスファルトから立ち昇る熱気で、まるで蒸し焼きにされているよう。
三人揃って茹だるような暑さの中、遅々とした歩みで進む。
そんな中、私はとある一軒の店に目を止めた。
ポップなロゴが踊る派手なその看板は、アイスクリームのチェーン店のものだ。
その冷たくて甘い誘惑に、私は抗えるはずもなかった。
「アイス!!食べよう!!!」
「賛成!!!」
私の提案にダンテがすかさず同意する。
「俺はいい」
「痩せ我慢すんなよお兄ちゃんよー」
「別にしていない」
首を振るバージルに、私とダンテは苦笑する。
仏頂面でアイスをかじるバージル……想像したら面白い絵面だ。
多分そんな自分を分かっているから、この自尊心の塊みたいな人は拒否しているのだ。
「……じゃあバージルは後でアイスコーヒーでも買おっか。わたしアイス買ってくる!!」
大柄な男二人を連れて入るには少し狭い店内だ。
私は二人をその場に残してアイスを買いに走った。
そして数分後……。
「あー!溶けるー!!」
「バッカお前何やってんだ、早く食え!」
灼熱の太陽光が、カップに入った3段重ねのアイスを容赦なく溶かしていく。
「お前何で3段も買ってんだよ!」
「だって今なら2つ買ったら1つおまけでついてくるって言うから!」
私とダンテは慌ててアイスを食べ始める。
が、容赦なく照りつける太陽がそれよりも早くアイスを溶かしていく。
「だめだー!バージル手伝って!スプーンもう1つあるから!」
「ハァ……」
盛大にわざとらしく溜息をつきつつ、バージルは私とダンテに付き合ってアイスを食べ始めた。
そして、三人揃って口内からパチパチと弾ける音が響きだす。
それに驚いたバージルが、目を剥いて慌てたように私に言う。
「……口の中が弾けてるんだが!?」
「そういうフレーバーだから」
パチパチキャンディーをアイスクリームの中に混ぜ込んだ、ちょっと刺激的で楽しいフレーバーだ。
爽やかな味とアイスの冷たさで、少しだけ私は涼しくなる。
口の中をパチパチさせながら、一つのカップを囲んでアイスを食べている三人組の絵面がなんとなくおかしい。
ダンテも同じくそう思ったのか、アイスを口に運びつつ私と目配せしてニヤッと笑う。
バージルは機嫌悪そうだったけど、私と視線が合うと、ちょっとだけ口角を持ち上げて笑ってくれた。
──暑い夏の日の、少しだけ涼を得た時間のはなし。
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