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□繚乱〜東雲〜
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「少女」桂は生まれてから後、大きな病気にもかからず、親の心配を余所にすくすくと、美しく育つ。
五つを越えた桂はどこから見ても可愛らしい娘でしかない。
それは桂の趣味嗜好にも表れた。
「父様、わたし、この簪を挿してみたいの」
小間物屋という環境。桂の目はその日仕入れた簪の中で最も細工の細かい、高価な物に止まる。
「お前にはまだ少し早いな…よし、なら」
父はそう言うと桂の髪に可愛らしい房がたっぷりと付いた簪をさくりと挿す。
小さな桂の艶やかな黒髪にとても似合う赤い房。
桂はそれを気に入ったのだろう、有り難う父様と笑うと店を飛び出してまた友達の輪へ走る。
そんな事が何日か続いた頃。
桂が一人の若い女性を連れて店へ帰って来た。父も母も店子達も何かあったのかと驚いたが、そんな面々に桂は笑顔で言う。
「お姉さんがね、わたしとお揃いの簪が欲しいって」
「この子が着けているのがとても可愛らしいので…お品はありますか?」
桂と女性の言葉に店子達は急いで棚を探し、女性の前に桂の着けている簪を色とりどりに並べる。
「こちらにはお色が沢山ございまして…」
桂は女性が簪を購入、笑顔で店を出るまで店の中で可愛らしい笑顔を浮かべていた。
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