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□繚乱〜朧月〜
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母が妹を出産した年、作物の収穫量は激減、上の兄二人の仕送りでかろうじて私と父母、弟、妹二人は生活していた。
父の疲労は相当に違いなく、それに伴う心労と産後の不調からか母も病気がちになった。
六歳になった私は父と共に畑へ出たが、私に出来る事など微々たる事で、父の負担を減らす事は出来なかった。
そんなある日の朝早く。
見慣れない女性が村へ来た。
小さな村で、村全部が家族の様な場所だから、余所者が入ってくるとすぐに分かるのだ。
少し丸い体を揺すりながら歩くその女性は村を一回りした後、畑仕事の終わる昼過ぎに、私の家へ来た。
不思議がる私に父は妹を背負わせ、双子の弟妹と一緒に少し散歩をして来いと告げた。
父がそう言うのだ、私に嫌だと言う権利はない。
私は弟妹の手を左右に握り、暖かい午後の散歩を始めた。

太陽の傾きである程度の時間経過を見た私は、少し疲れた様子の弟妹に「帰ったらご飯の手伝いだよ」と話しながら家へ戻ろうとした。
ふと見た家の前。
例の女性に父が何やら話しているのが見える。
近寄り難いその風景を私は遠巻きに見る。
父は女性に二度三度頭を下げてから、女性から何か、包みの様な物を渡されている。
父の頼まれ物だろうか。
私はそう考えて家へ近付き、女性の横をすり抜けながら「只今」とだけ口にする。
家へ入ると、今日は体調が良いのか母が迎えてくれた。
背中から妹を下ろし、母を見ると、母は細い手で私の頭を撫でてくれる。
「いつも、有り難う」
母からの言葉。
私は気恥ずかしい気持ちになってしまい、えへへ、と笑うと食事の支度に取りかかる。
その時。
不意に近付いた父が私の手を止めた。
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