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□繚乱〜総次郎〜
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〜利介〜

あっしが総次郎の旦那に会ったのはそこの酒屋でさ。
偶然差し向かいになりましてね、そうなりゃまぁ一献、ってなもんでさ。
二人で銚子何本空けたか覚えてやしませんが、あっしらはすっかり意気投合しちまった。
「武士として、刀で生きていきたい」
旦那はいつもそう言いながら酒に手を出してましたよ。
で、あっしは昔の仲間に掛け合いましてね。
お察しの通り、良い連中じゃござんせんが、旦那の願いはそいつらなら叶うんじゃねぇかって思ったんでさ。
そいつらは「人斬り集団」でしてね、勿論、一癖ある奴しか斬りゃしませんが、それを生業にしてるんでさ。
まぁお天道さんに顔向け出来る真っ当な仕事じゃねぇ。
あっしは自分が掛け合った癖に旦那にそれを話すか悩んじまって、結局酒の肴に話したんでさ。
酒の上なら忘れちまうと踏んだんだが、旦那はそれをきっちり覚えてた。
次にあっしと会った時に「仲間に会わせてくれ」ってんで、あっしは止めたんでさ。
奴らに関わっちゃろくな事にならねぇって。
現にあっしも何度番屋の世話になったか分からねえんですから。
でも旦那はあっしの言う事なんざ気にもしなかった。
ああまで真顔で言われたら、連れてくしかないってもんです。
隠れ家の場所は言えねえが、そこに着いて、奴らは旦那の腕が見たいと言い出しやがった。
旦那にその夜、人を斬れってんでさ、あっしはもう気が気じゃござんせん。
旦那は、多分、その夜に人を斬ったんでしょうね、奴らにすっかり気に入られて、重宝されてましたよ。
人を斬って捕まらねぇのが妙だと思うでしょうがね、奴らの裏にゃ番屋より上のお人が付いてるって噂もある位だ、今更人一人斬った位じゃ番屋の世話にもなりゃしねぇんで。
じゃあ何であっしが番屋の世話になったのかって?
あっしは使い走りでね、奴らもそんな下っ端は庇いきれねぇんでさ。
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