R×B SS
□七夕
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「…そういえばさぁ、何で織姫と彦星って年に1回しか会えねぇんだ? 確か2人って恋人同士なんだろ?」
今日は7月7日、日本では七夕と呼ばれる日である。
燐は教室前の飾り付けをした笹へと願い事を書いた紙を括り付けながらふと思った事を口にした。
「年に1回しか会えねぇとか可哀想じゃね? …まさか本当はもう愛は冷めちまったからとかか!?」
燐のその唐突な発言に周りにいた者は一瞬きょとんとした顔になっている。
「他には、…うぅん?」
急に織姫と彦星について考え始めた燐は頭を抱えうんうんと唸っている。
「…燐の口から『愛は冷めた』が出てくるとは思わなかったよ。」
「というより織姫彦星の話知らなかったんですか?」
綱吉と骸が燐の方へと目線を向けると燐はまだ頭を抱え考え込んでいる。
すると何か思いついたのか山本は手をポンと叩くと口を開いた。
「一言で言えば2人ってバカップルだったから引き離されたんだろ?」
「…いや、間違ってはおらへんで? けどなぁ…。」
「…そない説明じゃロマンも何もあったもんやあらへんやんか。」
山本のある意味的を獲た発言に勝呂と志摩はついツッコミを入れてしまった。
それを見かねたのか獄寺は席を立つと教室の前の黒板へと歩み寄りチョークを手にした。
そしていつの間にか掛けていた眼鏡の位置をくいと直すと燐達の方へと向き直った。
「(隼人スイッチ入っちゃったなぁ…。)」
綱吉がそんな事を思ってるとは露知らず、獄寺は七夕について語り出した。
「いいか? 天帝の娘である織女、いわゆる織姫だな。織姫は機(ハタ)を織るのが仕事だったんだ。だがあまりにも仕事ばっかする織姫を心配した天帝は娘の織姫を天の川の向かい岸にいる牽牛、彦星と引き合わせたんだ。」
「ちなみに彦星の仕事は確か牛飼いですよ。」
骸が補足を加えつつここまで説明すると黒板には機を織る織姫とそれを心配する天帝、そして川を挟んだ向かいには彦星の絵が描かれていた。
「だが出逢った2人は恋に落ちそれに夢中になっちまった。それで仕事を全然やんなくなったんだよ。」
そう説明しつつ先程の絵の横に獄寺は仕事を放置しいちゃついている織姫彦星の絵を描いていく。
「それでだな、その仕事を全然しなくなった2人を見た天帝は怒り2人を天の川の両岸に引き離したんだ。」
そしてまた先程の絵の横にイラストを描いていく獄寺。その絵は川を挟み引き離された織姫彦星が描かれている。
「だが2人は離れ離れになった事を凄く悲しんだんだ。その様子を哀れに思った天帝は1年に一度、7月7日の夜にだけ会うことを許したんだ。」
そう説明しつつまた先程の絵の横にさらさらと絵を描いていく獄寺。
今度の絵は悲しみに暮れ泣いている織姫彦星とそれを見て哀れと思った天帝の姿、そしてその絵の横に年に一度会う事を許され喜んでいる織姫彦星が描かれている。
「…なぁなぁ、もし雨降って川の水増えたらどうすんだ? そしたら危なくて川渡れねぇじゃん。」
そこまで獄寺の説明を珍しく大人しく聞いていた燐はふと思った素朴な疑問を獄寺へとぶつけた。
「あぁ…。その時は鵲(カササギ)っていう鳥が2人の橋渡しをすんだよ。」
「へぇ…。」
獄寺が織姫と彦星について説明を終えると燐は獄寺の方を向き目をキラキラと輝かせていた。
「獄寺凄ぇな! 俺、織姫と彦星ってこんな話だって知らなかったよ! それで七夕の日に短冊に願い事書いて笹に吊すと2人が幸せ分けてくれて願いが叶うんだな♪」
最後の辺りは燐の勝手な思い込みなのだが、…なんとも夢のある事だろう。
「(…でも確かに織姫彦星ってバカップルだよね、仕事放り出してまでいちゃつくなんて。)」
「(え、今それ言っちゃう? 隼人が頑張って説明した後に?)」
「(間違ってはいないでしょ?)」
「(まぁそうだけど…。それだとただ単に『いちゃいちゃし過ぎた自業自得なバカップル』で夢が無いじゃない。)」
「(ツナの方がその…、恭弥の言い方より結構酷い。)」
だがそんな燐の後ろでは獄寺が説明し終えた後、綱吉と雲雀が夢の無い話をしていたりした。
だがイタリア語で話していたためにたまたま側にいたクローム以外には意味が分からなかった為良しとしよう。