何某学園幽霊劇部 本編

□Lunch Time Wars
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朔夜は友達と一年へ組の前にたたずんでいた。商業科のい組は一階だが、普通科のへ組は二階にある。鞍羅の教室は聞いていなかったが零威の教室は聞いていたので待ち伏せすることにしたのだ。
時間は昼。テストが終わってすぐ友達の白夜を引き連れてやってきた。
白夜は朔夜ほど身長のある背の高い女の子で朔夜と同じクラスだ。すぐに仲良くなった彼女は中学生の時、便宜上在籍していた零威と同じクラスだったそうだ。三年間一度も出席しなかった彼女の家に学校の届けものをしていたので顔見知りではあるらしい。部室で出会った零威の話をすると、自分も是非友達になりたいので昼休み一緒に食事でも誘わないかと言う話になったのだ。

「すみません、剣零威ちゃんってまだ教室にいる?」
「あ、は、はい」
「俺、皇って言うんだけど呼んでもらえるかな?」
「ちょっと待ってて…剣さーん」

なかなか出てこない零威にしびれを切らして、朔夜は教室から出ていこうとした女子に声をかけた。女の子はどぎまぎした風に了承して教室の中へ駆け戻っていった。

「剣さん、皇くんって子が呼んでるよ。お友達?」
「すめらぎ?」

一人で弁当の包みを開こうとした零威のところへさっきの女子が寄ってきた。聞き覚えのある名前だがピンと来ない。誰だろう。女の子の脇から入口の方を覗くと、見知った顔がふたつ並んでこっちに手をふっている。なるほど、皇は朔夜の名字だったか。

「ありがとう、部活の友達よ」
「え?剣さんもう部活決めたの?」
「ええ。部活するために入学したようなもんだから…」
「ね、ねぇ、剣さん?」
「なぁに?」
「あの左の子…男の子よね?」
「は?」
「ほら、あの皇…くん?男の子なのよね?」
「え、ええ、そうだけど」
「あのね、テストが終わってからずっとあそこにいるから…みんな気になってると思うんだけど…」
「そうなの!?ごめん、邪魔しないように言ってやるわ」
「そうじゃなくてねっ、あの…ちょっと訊きたいんだけど…」
「ど、どうしたの?」

口ごもって顔を赤らめる女子にクラス一同の視線が集まる。代表して言うのだ、学園代表として今訊かねばならない。入学式の日(二日前だが)からずっと噂になっていた人物が我が教室にやってきたのだ。ここで聞かなければ女が廃る。零威は不審そうに彼女を見ている。息を飲んで決意すると零威の耳を引き寄せてかすかな声で聞いた。

「皇くんって…ホモなの?」

零威の思考が一旦停止した。耳から入った情報が脳みそに染み渡っていくのに時間がかかる。「モテるの?」「彼女いるの?」その質問は予期していたが(答えは知らないが)その言葉は予想外だった。

「は?」
「あのね、実は入学式の日にね…」

彼女の話はこうだった。入学式の最中におよそ似合わない白衣の男と正装に野球帽をかぶった妙な二人組がいた。変な風体だったが顔は良く、女子はみな注目していた。入学式が終わり誰の保護者なのか問い詰めようと跡を追うと、その先に朔夜がいたと言うわけだ。



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