十四支

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透がテント暮らしをしていた、という
衝撃的な事実を由希から言われた音流は、
目を見開いた。
が、それもすぐに治まり、透への質問(尋問?)が始まった。

「そう…それであんなテント暮らしを。
いつ頃からあそこにいたの?」
由希が尋ねる横で、音流は
未だに笑っている紫呉を冷たい目で見ていた。
「一週間ほど前からです…。」
「そんな…言ってくれれば良かったのに。」
音流がそう言うと、透は首を横に振った。
「すみません…。
…でも。音流ちゃん達に迷惑は掛けたくなかったんです。」
透の内心を理解している音流は、
その思いが嫌になる程分かっていた。
「…謝らないで。
分かってるから。…透の、その優しさは。」
そう言って不安そうな透を安心させるように微笑んだ。

「…おかしいと思ったんだ。
この小山は、草摩の土地だから。
貸しても売ってもないから。」
そういう由希に、透は膝においてある手を
強く握りしめた。
「あの…。
お願いします。
しばらく、あそこを貸して下さい…っ!
改築が終われば、すぐ立ち去ります。
お金…は、あまり無いけど払います。
お願いします…っ!」
必死に頼み込む透に、
やっと笑い終わった紫呉が言った。
「あそこ危ないよ。
崖の土ゆるいし、チカンもたまに出るし。
…現に被害者がそこに居るしね。
第一、女の子が何ヶ月もテント暮らしなんて無理だよ。」
被害者。
無論(…いや、そのチカンがそういう人でなければ)、音流の事である。
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