十四支

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「大丈夫です、ナメクジにもなれました!!」
そう言ってスクッと立ち上がった透。
その言葉に、音流達は顔には出していないものの、
内心嫌な顔をしていた。
「体力だって、気力だって充分ばっちりありますっ!」
音流は、その言葉に僅かに眉を寄せた。
「透。
私、透に無理させたくないの。
いつ土砂崩れが起こるかもわからない所に、
透を一人になんてさせられないわ。」
音流が透を見上げながら言うと、透は
「音流ちゃん…。」
と涙ぐんだ。
その時、透がフラッと倒れそうになった。
それを見た音流は、人間とは思えぬ程の素早さで透を受け止めた。
「透!!大丈夫!?」
音流が透の額に手を置くと、そこはとても熱かった。
「熱がある…。」
そう呟くと、由希が
「顔色が悪いはずだよ。」
と言った。
「とりあえず氷、氷…は?音流ちゃん。」
「冷蔵庫の中に…って、忘れてた。
今、調度氷無かったんだったわ…。」
紫呉宅の台所は、音流が管理している。
その為か、台所はいつも綺麗である。
音流は、額に手をやって溜息を吐いた。
「今から氷らせるから…1時間は掛かるわね。
…あ、由希。
私の代わりに救急箱持ってきて。」
そう言って立ち上がり、氷を作ろうとしている音流を
見ていた紫呉は、“仲間”の声を聞いた。

「…ほら、さっそくどこかで崖崩れが起きたみたいだよ。」
「え!?」
「この間の台風で、また土がゆるんだかなあ。」
飄々と言う紫呉に、透は驚いた。
「あ、あの…どうしてわかるんですか…?」
由希は、紫呉の情報を聞き戸の前で止まった。
「ん?
野生の勘ってヤツかな…。」
そう言ってふざける紫呉に、音流は
水を冷蔵庫に入れながら、冷たく言った。
「…ふざけてないで、どの辺が被害にあったか分からないの?」
すると、紫呉は言う。
「クールだなぁ、音流ちゃんは。」
それを流しながら、音流は由希が
救急箱を片手に戻ってきたのに気付いた。
「…もしかして、
テントの近くだったりしてー!!
なんちゃって、と言いながら笑う透は、
やはり熱があるようだ。
顔が赤く、キャラが違う。
「まっさかぁーっ!」
一緒に笑う紫呉に、由希が尋ねる。
「で?どこなの?」
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