十四支

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透が教室に戻ってくると、由希も一緒だった。
「…もしかして、由希に何か言われた?」
そう言って首を傾げれば、透は驚いたように
「えっ!?」
と言った。
「…え、と。
…記憶を、消すかもしれないって言ってました。」
少し俯いて、口篭りながら言われた言葉は、音流の予想通りだった。
「……そっか。」
そう言って微笑った音流に、透は顔を上げると、音流の顔が少し悲しそうに見えた。
「けどっ、私大丈夫ですからっ!!」
いきなりそう言った透に、音流は驚いたように目を見開いた。
「例え記憶がなくなっても、またお友達になればいいのですからっ!!」
自分より背の高い音流を見上げて、そう説得する透に、
音流は初めは目を見開いていたが、次第に笑みが零れた。
「…ありがとう、透。」

「…どーしたんだ?二人共。」
「ふふ、透が励ましてくれたの。」
「えっ!?そ、そんな大それた事は…!!」
音流の言葉に、顔の前で両手を振る透。
「あら…何か落ち込んでいたの?」
意外、とでも言うかのように咲が尋ねる。
「まぁ、そんなところよ。」
「言ってくれりゃぁ良かったのに。」
そう言って口を尖らせるありさ。
「ふふ、ありがとう。でももう大丈夫よ。」
透のお陰で、と言えば、更に透が慌てた。
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