十四支

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授業が終わり、いつの間にか―否、
きっと二人が一緒に戻ってきた時だろうが―由希と透が共に帰る約束をしていたので、
三人で帰ることになった。

帰る途中、由希と透は透が更衣をし終わった後に話した事を音流に話していた。


――

透が女子更衣室から出てくると、由希が壁に凭れ掛かっていた。
「本田さん。
話してないんだね、友達に―俺達の事。
…まぁ、音流が居るからどの道話せないだろうけど。」
「え…?はい。
話してません…けど。
ハッ!!もしかして不安にさせているですか!?
私…私、絶対話しません!!
他人様の事をベラベラ話すのは悪党だって、お母さんによく言われましたっ!」
一人で焦る透に、由希は冷静に答えた。
「…イヤ、そうじゃなくて。」
だが、透は聞こえていないようで尚も言う。
「誓いを立てます。
血判状でも根性焼きでも何でもします!!
お母さんも昔よくやったらしく…「いや、だからそうじゃなくて。」
もう一度そう言うと、由希は透がこれ以上独り歩きするのを防ぐため、
透を壁に凭れさせた。
「―…折角秘密を守ろうとしてくれてるのに、ごめんね。
君の記憶を消す事になるかも……。」
「…!?」
意味が分からずに目を見開く透に、尚も続けた。
「消すって言っても、催眠術みたいなモノなんだけど。
…昔もね、今日みたいにバレた事があるんだ。
俺が小2の時。
実家の庭で遊んでて、…女の子がふざけて抱きついてきて…。
結局その場にいた人間全員の記憶を隠蔽する騒ぎになったんだ……。」
そこまで言って、何か嫌な事を思い出したかのように目を伏せて黙った由希を、
透は不思議に思った。
「草摩君……?」
「……。
俺は、慊人の決めた事に逆らえないから。
どんな決定が下っても、何もできないんだ。
だから…ごめん。
草摩の問題に巻き込んで、…ごめん。
それだけ…」
そう言って背中を向けた由希に、透は思わず抱きついて止めた。
「あっ、あの。
待…っ」
「!」
次の瞬間。
ボンッ
鼠に変わった。
それから懺悔をする透を宥めると、落ち着いた透は話を切り出した。
「えと、心配してくれてありがとうございます。
嬉しいです、すごく…。
私、大丈夫です、平気ですっ!
御当主に連絡しなくちゃいけないほど重大な秘密を知ってしまったなら、
仕方ないって思ってますから。
だから、草摩君や音流ちゃん達が一番安心する方法をとって下さい。

…記憶が消されちゃっても、また。
お友達になって下さいね……っ!」
そう言った瞬間、由希の姿が戻った。

――


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