十四支

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そんな穏やかな時間は突然途切れた。
大きな音を立てて窓を開け、入ってくる夾と紫呉。
「だから少し話をきくんだ夾!!」
「っるせぇ!!」
そんな2人に由希は目を見開き、透はビクッとした。
…因みに音流は普通にお茶を啜っていた。

「あったまきたっ!
そーやって人を手の平の上で転がして楽しいかよ!!」
「待ちなさいっ。
楽しくないかと言えばかなり楽しいが、でも君の為なんだよ。」
「全っ然説得力無ぇ!!」
ドカドカと居間を突っ切る2人。
迷惑この上ない。
それでも透は遠慮気味に口を開いた。
「あのおかえりなさい。
夕食は…「いらねぇ!!」
八つ当たりのように怒鳴る夾を咎める紫呉。
「夾!!
透君にあたるんじゃないっ!
というかちゃんと玄関から入りなさい靴も脱ぐ!!」
「後半2つは紫呉もでしょ。」
「紫呉ホントに説得力無いね。」
2人から冷めた目で見られたが、透は違った。
「スーツ着てるの初めてみたです似合ってます…っ」
「えっそう!?
そうかな!?」
決めポーズをする紫呉に冷めた声色で言う2人。
「ホストみたい。」
「お世辞を本気に取るほど褒められ慣れてないの?」
そんな棘の塊を投げられても紫呉はスルーした。
「あっゴハンできてる!」
語尾にハートマークが見える。
「あ、あの夾さんは一体……。」
「ああ、アレね。
怒ってるから放っといて。
今日騙して編入試験受けさせたもんだから。」
その言葉に覚った様子で睨む音流に内心冷や汗をかきながら言う。
「つまり明日から夾君も、君達と同じ高校に通うこととなった訳ですよ」
語尾にハートマークをつけてニコリと笑う紫呉に対し、由希が固まったと思えば立ち上がる。
「食べるな近寄るな出て行け…っ」
静かに怒りを表す由希に紫呉は汗を掻く。
「うん…まあね、怒ると思ったよやっぱりね…。」
「由希、落ち着いて…」
と苦笑しながらお茶を差し出す音流に、紫呉は先程の睨みを思い出して引きつった笑みを浮かべた。
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