十四支

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透は家を発見し、その家の縁側に置いてある十二支の置物を見ていた。
「めずらしい事もあるなぁ。」
「!」
振り向けば、一人の着物を着た若い男性が新聞を持って立っていた。
「こんな処に女の子がいるなんて。
わー、女子高生ー
…最後に呟いた言葉はこの際無視だ。

「こっ、今日はっ
勝手にみせて頂いてましたっ」
透は焦って声が裏返りかけた。
「どうぞどうぞ。
日干しにしてる物ですから。」
男性―草摩紫呉が気楽に言った。
「でも、若い人が見て面白い物なんて無いでしょう。」
(うわ〜、美形な人です…っ)
透は思わず顔を赤くしながら
「いいえ、そんな。
この十二支の置き物なんて可愛いです!!」
と言った。
「そうでしょう。
僕も気に入ってるんだ。」
紫呉が縁側に座る。
「でも、やっぱり猫はいないですね…。」
透が残念そうに言うと、紫呉は興味を持ったように言った。
「猫?
ああ、もしかして、十二支の昔話に出てくる猫の事?
へー、よく知ってるねぇ。」
透は笑顔で答えた。
「はい…っ
お母さんがよくきかせてくれました…っ」
透はそれを思い出しながら紫呉に言った。

――


「…それくらい、
猫に思い入れあるんです。」
それを聞いて、紫呉の顔は面白そうな表情に変わっていた。
「へぇ〜〜?
“あいつ”がそれきいたら、どんな顔するかなぁ。」
単純に知らない話題が出たので
「はい?」
と透が聞き返すと、紫呉は軽く受け流した。
「いいえー。
でも君、戌年なんだね。
何かこう、親近感わくなぁ。
君も感じない?
何たって僕も“戌”だから…」
ガガン ズトン
話している途中で紫呉の頭に衝撃が二回走った。
「ね…」
紫呉が衝撃で俯いていると、
「何デレデレと鼻の下のばしてるのさ。」
「本当に。
全く、女子高生だからって…。」
呆れた様な男女の声が聞こえてきた。
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