一章: 過去に苦しむ正義達

□UMPIRE12 宣戦布告
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こんなにも

こんなにも

想っているのに

伝えられないもどかしさを

俺はそれでも逢おうとした。

その先にあったのは―・・内なる”恐怖”と必然であった”再会”だった―・・




















「ジュリア発見」

確かにプログラムはそう告げた。

固まるアポロンを余所に、彼の隣に在するオリンピアが頬に笑みを浮かべ、突如のプログラムに情報の真相と所在を伝えると”サタン号”のロビー内の大型画面パネルから映像が浮かび上がった。


濃い灰色の渦。それに塗れ群がる機械の戦士達。彼等邪魔する銀色の円盤。

そして―・・裸となった白いフロアが炎上しながらも二人の男女を映し出していた―・・

”彼”は傷ついた”彼女”を抱えて涙を流している。


「見つけた―・・。ジュリア!!」

オリンピアの顔には暗黒の笑みが浮かび上がっていた―・・

誰もが固まるその最中。

黒い球体上のロビーは漆黒且つ冷徹。その中で規則正しく白い文字列が室内を循環していた。

異変に気づいた包帯を額に巻いた頬にタトゥーをつけている科学者ロキと黒い長髪に憂いのある表情に黒い眼鏡を掛けている科学者アフロディテが二人同時にレーザーを構える音が聞こえた。


そしてもうひとつ―・・

「フッ、何の真似だ―・・?」

全身黒尽くめのオリンピアは思わず笑みを零した。

「アポロン君。」

オリンピアは正面から振り返る事が出来なかった。

その理由は彼の後ろ頭に既に”何か”が構えられていたからである。

その何かを構えるものに対してレーザーを構えたのがロキとアフロディテであった。

彼等の足元にはアレスが消えた事への無念さにハーネスが呆然とした表情のもぬけの殻の状態になっていた。

「ジュリアの元に行かれては”私が”困ります。」

オリンピアにレーザーを突きつけていたのは―・・紛れもない、アポロン・ディアスであった。

まだ幼さのある十歳位の容姿の少年。黒尽くめの姿が表情の冷酷さに上手く映えていた。

「どういうことだ?」

オリンピアは瞳だけを左に動かした。鋭い眼光が暗闇を射るかの如く。

「”私が”ジュリアを支配するのです―・・」
































ココハ・・ドコダ?


オレハ・・ドウシテココニイル?







「―・・して」

「・・か―・・」

「でも、それでは―・・」

「いいからやるんだ!さもないと―・・」




数々の音の調和説。


「理―・・だった・・」

「―・・では?」

自身を満たす液体の圧迫。


俺はそっと目を開けた。


周囲は緑色。いや―・・自分がそれに浸かっていたのだ。

するとよく見えなかったが科学者らしきもの達が驚嘆と歓喜の声を上げはじめた。

「良かった!良かった―・・」

「なんて生命力だ」

俺を包む緑の液体。口を開くと零れ出る気体が液体中をゴボゴボという音に晒した。

ガコンという音と共に向かれていく液体。−・・どうやら俺はプラスチック制の容器に入れられていたようであった。


その容器がガコンと開いて俺は狭い容器から開放された。−・・その都度。歩くたびに体のあちこちに繋がれていた導線を容易に引き千切ると、何人かの科学者に抱きしめられた。

悪いが―・・顔は、覚えていない。

「よく、よく―・・生き返ってくれた。」

どうやら俺は科学者達の実験によって生き返ったらしい。

抱きしめられて俺は驚いた。人間の温もりが上半身のみにしか感じられない。

俺は両腕と両足を動かして見て、じっくり眺めていた。

それは既に冷たく―・・人間の肌のなりをした”機械”になっていた。



俺は科学者の一人から黒いローブを渡された。ズキズキ頭が痛む。思わず温もりのない腕で自身の頭を抱えた。


「君の状態は酷いものだった。だから禁断の”アレ”を使わない限り君はここには戻れなかった。」

よく分からなかったが、どうやら俺は死んでも当然であったのに禁断の手法で救われたらしい。

とりあえず礼を言った。

「ありがとう。」

「でもそれとは引き換えに、君は殆ど人造人間になってしまい―・・また記憶を失うことになってしまった。−・・悪かった。」


記憶―・・?

「でも今、君は自由だ。今まで君は辛い目にあってきたのだ。これを持ち、自身の姿を隠してこれからは自由に生きなさい。−・・君がようやく手に入れた幸せなのだよ。」


俺は科学者から受け取ったものを見つめた。

―・・穴ぼこだらけの赤い仮面。縁には黄色の紋様が入っている。

俺は颯爽とその仮面を自身の顔に取り付けた。

「そうだ。君に新しい名前を授ける。君は―・・ガランデ。ガランデとして生きなさい。」

俺の意識は急に遠くなった。
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