一章: 過去に苦しむ正義達
□UMPIRE10 両翼をもがれた天使
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一方、こちらも薄暗い小部屋。大きな物が乱雑に置かれており、どこかの倉庫らしい。
その物置部屋に小さな気の流れが起きたかと思うと、そこから虹色の光に包まれた綺麗な一角を持った青年が現れる―・・
「ここは−・・?」
薄暗い倉庫の中で、一人綺麗な青色の瞳を持つ青年ロボットのアレス・クレオがひっそりと周囲を見まわす。
辺り一面、真っ暗である。
アレスは自分の右耳に手を当てて、自分の内部に存在する視聴プログラムの高度を上げた。
周りは暗いままだが視覚は前よりもずっとはっきりしている。
機械と箱、不良品に埃。
乱雑に積まれている。その右奥に一線の光が見えた。
アレスは用心深く、そちらに行こうと体を動かすが、不意に体が動かなくなる…。
周囲は真っ暗。誰かの視線を、感じた。
「・…。」
アレスは突如、自分の体の性質をこの自分の乗る機体に合わせようとマッチングを始めた。
機体は大きな天使をモチーフとした巨大な飛空戦闘機らしい…。
アレスの脳裏にその全体像が現れた時、彼は絶句して思わず閉じていた青い瞳を全開させた。
「そんな…馬鹿な。」
その時、倉庫の外から陽気な声が聞こえた。
聞き覚えのあり、また懐かしき、大事な親友の声だった・・。
「ただいま戻りました〜」
数秒の間の後。
「おかえり。−・・ウンドコ」
「そんな…!まさか?!」
アレスは自分の聴プログラムを疑い、思わず右耳に手を当てる。
ここは2560年時に滞在していた”ヘヴン”だったのだ−・・
「どうして・・?ここで一体私は何をすれば−・・」
動揺する彼を余所に、一線の光の外は多分ロビーに近い通路かなんかだろう。
アレスはそっと焦る気持ちを抑えつけ、光の元にそろそろと進んだ。
「面白かったぜ〜♪なんたって今日はあのかの有名なアポロンと一騎打ちってやつ!!あはは…」
しらけた雰囲気が通路までをも埋め尽くす。
アレスはそっと笑みを浮かべた。
「フレイ様…」
涙が、頬を伝う。
懐かしい、その声に。
「んじゃ、ちょっくら小便してくんぜ〜」
すたこらさっさと通路から飛び出してくるフレイ。
アレスはその姿を眺めていた。
「フレイ・・様」
止まれと命令しても止まらぬ体。
アレスは自分の体を透明にし、彼の跡を追っていく。
倉庫からロビーを通り越し、何事も無くアレスはトイレに向かう彼を追っていく。
そこで彼はある事に気がつく。
「まさか−・・?」