一章: 過去に苦しむ正義達
□UMPIRE11 猛火の中で見た夢
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「何処に行くのです?−・・大統領」
円形状の広い空間は漆黒の如く。ちらちら光って見えるのはプログラム内の応答による点滅であろう中、操縦中心部屋とも呼べる飛空型戦闘機”ヘヴン”のロビー内で。
ウィンディから離れ、ロビーに赴いた少年ロボット、アポロン・ディアスは無数のデータ数が白い胴体を犇き合わせている中、黒に塗れた一つ目の黒い長髪を併せ持つ女型情報ロボットアルテミスの方へと顔を向ける。
「これから我が主の元に向かうのだよ。」
無表情で彼はアルテミスに近寄った。
「アレスの消息はどうだ・・?」
アルテミスは長い白の指を高速に自身下のパネルにせわしなくうごめいている中、そっと真相を告げた。
「今現状では分かりません。」
大きな一つ目が表示された画面パネルに怪しく光った。
「そうか・・。」
アポロンは踵を返してロビーの入り口に立った。
「アレスの消息掴めたら連絡を頼むぞ。」
黒い少年ロボットに問い掛ける一つ目の情報型ロボットは今だ背後に顔が回らず淡々と述べた。
「アレスは・・消すつもりですか?」
冷たい、一言に。
「あいつは”危険”だ。目的はあいつだったじゃあないか。アルテミス。−・・では頼む」
ロビー暗闇を仕切っていた両自動ドアがぐっと開いた。ガラス通路が人工の光に照らされ光り輝いて見える。
ロビー内のもその光が一瞬だけ覗いた。が、直ぐに両ドアが閉まり光は閉ざされた。
アルテミスは黙々任務に励んでいる。−・・細長い白の指をせわしなく入力パネルに動かし、情報を入力パネルから表示プログラムへ、そして自身の情報キャッチフィルターに表示プログラムの内容を赤外線でキャッチする。
闇に閉ざされたプログラム犇くロビー内で。
ひとり、アルテミスを囲む白い文字列が規則正しく時を刻んだ−・・
時は2800年。
既に上空は汚い濃い空気で侵されていて色さえも薄汚く灰色にしか見えない。
下の都心、様々な道路、公園市街地ー・・あらゆる場所に置いて無数の死体が点点と群れを成している。−・・どの死体も無駄に白く、瞳さえも濁った白色に変色し、子供や大人−・・老人あらゆる立場の人間において無差別に空いた口の端から一筋の血跡、そして泡が垂れて見えた。
その上空を今だ泳いでいた”サタン号”。
大きな球の先端に悪魔を連想させる黒き蝙蝠の翼がばたばたうごめいている中、球の下では大きな高層住宅とビル、そして鉄塔を繋ぎ合わせた物体が反転したように黒の螺旋階段とセットになって球に繋がっていた。
奇怪な姿のこの飛空型戦闘機の中核は球そのものがロビーと化している。
そのロビー内で緊迫地味た状況が勃発されていた。
「これで終わりだ−・・!!オリンピア−・・!」
その”サタン号”の中核であるロビーは”ヘヴン”と変わらない漆黒さと広さ、そして情報網のデータ列が並んでいたのだが、今はオリンピアの使う戦闘プログラムから放たれた金色の女神サイボーグが修復中だ。
何と言ったって突然襲った敵はかつての自分たちの仲間であった。
無数のプログラムが異常を発令している。そのプログラムの真下のフロアで倒れているのは吹き飛ばされた銀髪の額に包帯をぐるぐる巻きにした科学者ロキ。
彼の隣には既に首の骨を折られ、出血しながらもう既に事切れた獣の如く宙を消えた眼光で見つめ続けているのはショート頭の黒髪で賢そうな顔をしたノグル。
彼等よりはるか一寸先に息を切らしながら佇んでいたのは自身の戦闘プログラムを発動させ、2mを越える棒の機械を両手に持つ長い黒髪、知的な黒い瞳。その瞳を覆う黒ぶち眼鏡をかけた女科学者であるアフロディテ。
彼女を庇うように立っていたのはウェーブかかった短い黒と若干白が混ざった髪に厳つい表情の黒い服に身を包んだこの”サタン号”担しテロ組織”ヘル”の頭領オリンピア。
そんな彼等よりも遥か遠くに立つ中年の短い尖った黒髪の科学者ハーネスが悔しさに思わず舌打ちをしていた。
「やめろ!!」
彼のまん前に居た包帯を顔全体に撒きこんだ銀髪の跳ねた髪の男科学者ムルーンが今や今やと自身の持つ”サタン号”自爆のプログラムの始動を促している最中であった。
先ほどノグルとムルーンは同時にオリンピアの収集があり帰って来たが裏切り行為に突然走り、現状況に至っていた。
ムルーンが狂ったように指を動かして自爆装置を今こそ発動しようと解除IDを装置の中央に配属されたタッチパネルに指を循環させている。
「くそ−・・!」
ハーネスの苦痛の悲鳴が周囲を木霊した。円形状の球体ロビーがやけに木霊に協力してくれている。
ムルーンは目的を果たしたのかタッチパネルから手を離して自分の頭上にそれを大きく抱えた。
「さらばだー・・」
しかしオリンピアの表情は決して曇らなかった。
「甘いな。」
その一言に。
「何?!!−・・っ」
ムルーンの形相に焦りが生じる。それはその一言だけではない。
その場では”何も”起こらなかったのである−・・。
「何故だー・・?!」