天国へのSong
□2・song トラウマという名の反抗期
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『昴?−・・どうして泣いてるの?お母さん、昴の歌、好きだよ?』
どうしてそんな事言うんだよ・・・母さん。
俺は音痴だぜ?
我侭なんだぜ?
なぁ・・・俺も天使にさせてくれよ。
白い光の中で。
おぼろげに見える・・・長い黒の髪。
優しげな瞳。
手を伸ばせば届きそうで・・・でも
届かない存在・・・
なぁ・・・母さん−・・・
「ばる−・・?・・・・す・・・ばる・・」
意識の片隅で声が聞こえる。
「かあ・・ちゃん?」
視界がぼやけて見える・・。しかしそれは一瞬の事ですぐに周囲の視力が俺の目に宿った。
白く見えるが滑稽な四角い天井。丸い電灯が静かになったままだ。
「昴?」
俺の顔を覗き込んできた・・・
「礼奈?」
栗色の長く、カールがかった髪。カール部分にジュエリーを散りばめたお洒落な白のワンピースを着た幼馴染を俺は見つめ返した。
「なんでお前がいるんだよ?」
俺の問答に礼奈ははぁっと溜息をついてオレンジのカラーコンタクトの入った瞳でじろりと睨んで来た。
「あんた・・・なにやったか覚えてないの?」
同い年の南礼奈のその問に俺は両目を丸くした。
「朝っぱらから親父さんと喧嘩して自宅の二階から飛び降りたのよ?!」
無論、俺の頭の中は真っ白になった。―・・しかしなんとか思考回路を手繰り寄せてみる・・
『お前に夢はないのか?』
厳ついジジイの切なそうな顔。そして周囲に散ばった可愛い感じの兎やペンギンのぬいぐるみの残骸達・・・
『俺の夢はあの鳥のような自由人になることだぜー!!』
無謀にもその後、窓から・・・
「あ―――――!!」
思わず絶叫した俺に礼奈の右アッパーが飛んだ。
−・・おいおい。病み上がりになんてことすんだよ。
礼奈のアッパーに飛ばされた俺はベットにうつ伏せになりながらも笑った。
「しっかし、それでいてよく死ななかったなー。俺!っさすが〜」
そんな悠著に笑う俺の襟首を掴んで持ち上げる礼奈は鬼だと思った。−・・ていうか点滴外れてるんですけど。
「こんのー・・馬鹿!!心配かけさせないでよね!」
ぷいと立ち去る礼奈は微妙に可愛いかも。あの垂目具合がなんとも―・・じゃなくて俺の周りの人間ってみんな暴走族ばっかな!!
とりあえず痛みもそんななく、下半身に巻かれた包帯をとって外傷あるか確認してみた。
ない。−・・全然。
「俺ってすげー!!」
叫んだその後、オバさん看護士がやってきて俺にひとしきり文句言った後突然オジさん医師を連れてくると二人で密談し始めた。後、なんとありえない!!俺様を強制的に病院から追い出した−・・!!
「ひでぇ」
とぼとぼ長いぼさぼさ頭を滅茶糞に掻き、白いパジャマのままで俺は行く当てもなしに”いつもの場所”に向かおうとしていた。
よく警察に通報されなかったな。俺。
”いつもの場所”それは俺のフリーター仕事先
。
仕事先にそろそろ裏口から入っていく俺。
真っ暗の中で自分のロッカーを見つける。
え?電気つけろって?
何言ってんだよ!驚かしたいから点けないに決まってんじゃん。
そろそろロッカーから黒のスーツとピンクの蝶ネクタイを取りだしさっさっと着替えた。
きちんとシャツも準備満タン。
そして俺は仕事場に顔を出し―・・
「らっしゃい♪」
「八百屋じゃねぇんだよっボケ」
勝手口からすらりと登場した俺に向かって何故か拳骨が降り注いだ・・
だから、病み上がりなんだけど・・
カントリー風な広い木造の小屋。天井にはカントリーにちなんだ木造のナチュラル感溢れる電灯がプロペラと共に宙をさ迷う。
勝手口はカウンターへと通じていて俺はこのカウンターにて接客するわけ。
え?何言ってるんだ。俺はホストじゃない!てか今あれだよ。昼間。
ここは俺の友人が経営する喫茶店。いわゆる俺の仕事場。
クラシック調の音楽が周囲に飛びかい、シックな雰囲気を促す。
カウンターにはコーヒーを精製する機械等を挟み、既に陳列する人々でにぎわう。
木造の丸イス座る殆どの客は常連だ。
「あ、昴ちゃんー!元気そうね」とおばさん連中が俺に向かって挨拶してくる。
「ちーっす」と呑気に手を振っていると又もや同一人物に頭を殴られた。
「ばかちん!きちんと接客しやがれっ」
「あいあいよおおお」
無駄に振りかぶってやったら相手はこの喫茶店クレイジー経営者でもあり俺の親友であるレンが飽きれ返って俺を見つめていた。