哀愁
□紅葉
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紅い季節にもやがて瑞々しい憂いの季節がやってくる。
それは青々とした、緑の季節。それは今まで苦しんでいた僕にも訪れようとしていた―・・・。
「ちょっと!愁人、私の言ったこと、聞いた?」
僕はびっくりして声の方に振り向いた。
今僕らは暗い夜道をのっそりと歩いていた。
木々が夜道をさらに濃くしている中、僕は先ほど皐に出会った。
皐は友達と一緒に千秋の情報を調べていてくれた。・・・その分では感謝していた。今、頼れるべき友は皐しかいなかった。
「千秋、ホームページやってるらしいよ。」
ちらちら影の中から僕を覗いてくる皐。・・なんだか悪戯小僧のようだった。
「今、お客さんいないらしいからいってやりなよ。愁人。」
僕はどきっとした。
「なんでだよ!!」
僕のその様子を見た皐は笑い出した。・・・失礼な女め。
「まったく素直じゃないんだから。・・パソコン自分家にあるんでしょ?はい、これアドレス。」
皐から小さな紙切れを渡された僕は渋々それを受け取った。
「少しはそれで仲を深めなさい。分かった?」
僕は嫌そうな顔とは裏腹に心の中がすがすがしくなっていくのが感じられた。
「馬鹿じゃないか?そんな事しないよ!」
僕は背を向けて自分の家に帰って行く。背中から僕は皐に礼を言った。・・・たぶん彼女は気づいてくれているだろう・・。
ありがとう・・・皐。
僕の急ぎ足に漆黒の葉が、ちらり。
優しく一葉、舞い降りた―・・。