哀愁

□黄葉
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佐倉はその小瓶の中にいる鼠が外に出ないよう、頭を抑えながら透明な蓋を開けると、その”薬物”を注入し、再び蓋を閉める・・・
彼はにやりとした。

僕は震えた・・・




彼のその所作に、何故か昔の僕の所作が重なった・・・



嫌がる彼女に、何をしたか。

彼女の悲鳴に僕がどんな残忍な顔で笑い転げたか。

彼女の長い髪の毛を無理やり引きずり回し・・・泣く彼女に僕は・
・・・






「おはは!・・見ろ!」
薄目を開けてみると、なんと、鼠が青紫色の顔をして泡を吹きながら一瞬にして命を絶った。

苦しんだ様子もなく、穏やかな表情で目を瞑っていた。

僕は息苦しくなった・・・なんてことを。
僕は席をそっと立ったが、僕よりも早く行動を起こした者が居た。
それは・・・・






佐倉は突如歩み寄った女を睨みつけた・・

女・・・千秋は怒っていた。−・
・白い肌が微かに熱を帯びているのが分かる・・・

彼女はスケッチブックに何かを書いたのかそれを佐倉に見せた。



貴方、最低です。



それを見た佐倉の顔が歪む。翠は
その様子を訝しげに眺めていた。

「お前、何様だよ?」
佐倉の手が、伸びる・・・
その手が・・・千秋に向かって・
・・




僕の昔の傷とその現状がダブった

重なる、視界。・・・僕は我慢が出来なかった・・・僕は・・



鋭い音が僕の右頬を、襲った。
皆の息を呑む気配が耳を貫く。
僕はいつの間にか、千秋の前にいた。
佐倉もびっくりしていたが、翠の驚きようはなかった。

僕を赤の他人を見たような顔をしている・・・



僕はそれよりも、佐倉を睨んだ。
「いい加減にしろよ・・・」
佐倉は顔を青くして僕から逃げ出した。

「おい・・・」
翠の声がしたが、僕は無視して自分の机に戻って突っ伏した。

右頬がジンジンした・・

千秋が僕を見つめているような、
気がした・・・・。
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