□tutorial 〜雪山の肉食鳥竜〜
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柔らかい陽光が溢れて、世界が輝く。
視界一杯に広がるのは、氷雪に白く装飾された山々。
その様は正に悠然無比。大自然の美しさと威厳にただただ圧倒され、どうしようも無く湧き上がる感動に、心身の震えが抑えられない。
耳を澄ませば、冷たい風に乗ってそこかしこに息づく、命の鼓動が聞こえてくる。極寒の雪山という過酷な環境を物ともしない力強い鼓動だ。

「ミレリア!ベースキャンプから出たらそこは命のやり取りをする戦場!一時たりとも気を抜くなと言っているだろう。クエストもこれで五回目、いい加減景色に見とれて棒立ちになるのは止めたまえ」
「は、ハイ!先生、すみません」

そう。この俺、ミレリアがハンターとしてクエストのために雪山に来るのももう五回目。先生に怒られるのも五回目……。ほんの二ヶ月前までは王都付近の比較的大きな都市で暮らしていた。でも、とある事情からハンターになる事と母さんの故郷で暮らす事を決意。そして、辺境の雪山の麓にあるこの<ポッケ村>へと俺はやって来ていた。
都市部から村への道中に見た景色も十分驚いたけど、ベースキャンプ付近から望む雪山の景色は別格。都市周辺ではまずお目にかかれない光景に、心奪われてしまうのも仕方の無い事だと思う。それとも、他の多くの人達はそうでもないんだろうか…いつか聞いてみたいな。

「散策前に確認しておく。今回のクエストはドスギアノスの狩猟だ。ギアノス共の群れのボスでそう珍しくも強くも無いモンスターだが、君にはまだ少し早いかもしれんな。しかし、この私と一緒に狩るのだ。まあ安心したまえ」

「ハイ、先生。今日もご指導の程よろしくお願いします」

「フッフッフ。うむ、任せておきなさい」

俺が先生と呼ぶこの人はポッケ村の村付きハンターだ。まだハンターに成り立ての初心者が、1人でクエストに出るのが心配と言うことで、わざわざクエストに同行して狩りの基礎を教えてくれている。「先生と呼ぶように」とか強制されたり、自身が大船のつもりでいる言動が目立つけど、良い人だと思う。たぶん。ポッケ村の村長さんもハンターの腕は確かだと言っていたし。きっと大丈夫…なはず。人格とハンターとしての能力は別だと信じたい。いや信じよう。
「さあ、此処からが本番だよ、キミ。準備はいいかね?」

服用する事で、体を内側から温めて寒さを緩和してくれるホットドリンクを、アイテムポーチから取り出し、勢い良く飲み干して親指で口元を拭う。

「ハイ!」

身に着けた装備は【ボーンククリ】【ハンターシリーズ一式】
発動しているスキルは【自動マーキング】【剥ぎ取り鉄人】
原理はよく分からないけど、発動スキル【自動マーキング】のお陰で、標的たるドスギアノスの気配がはっきり感じられる。キャンプから持ってきた地図と照らし合わせて、大まかな場所を特定。極寒の雪山対策は教わった通りで万全。これで何の憂いも無く狩りが出来る……訳じゃ無い。

モンスターと対峙するのは正直恐ろしい。少なくとも、俺にとっては未知の猛獣達との命を賭けた戦い。それでも……。
俯きかけた顔を上げ、意を決して雪山の中腹に続く洞窟へ先生と共に入っていく。


さあ。狩りの始まりだ。
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