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□沈んだ船
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『俺は何か一つでも希望があれば、生きていけると思う…何も無くなったらさすがに無理だな…』
随分前だが、奴が何かの折りに言っていた。
奴が…アスランが死んで二年になる。
あっという間だった。
『俺は大丈夫だ。…そんなに心配するな。ったく、イザークってそんなに心配性だったか?』
死んだ日もいつもと変わらなかった。
何故死んだのかよくわからない。
普通だった。変わらなかった。
何一つ。
写真の中のアスランは穏やかに笑っている。
死んでから…いつの間にか持ち歩くようになった。
アスランの使っていた腕時計もするようになった。
『俺は何か一つでも希望があれば、生きていけると思う…さすがに何も無くなったら無理だな…』
…俺は奴の希望にはなれなかった。
俺の奴の"大切な人"だと思っていた。
辛いことがあっても、俺が奴の"支え"だと思っていた。
だが、…自惚れだったらしい。
「…イザーク…」
「わかっている。」
今日は奴の命日。
ディアッカと車から降りた。
涙はもう出ない。
後悔しかできない。
「アスラン、俺にとっては貴様は"希望"だった…」
墓の前に立ち、何度目かになるそれを呟いた。
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