S.S. Dream
□8/10もあるみたい
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授業中に居眠りをしていた罰として、夜に教室の片付けと資料の整理をみょうじに手伝わせていると、彼女は時折「もういや」などと声をあげた。
しかし自業自得であるので、我輩はそんな悲痛の叫びなど聞きはしない。
それにしても、昨日の彼女にはしてやられた。
ハグの日などと称し、我輩に抱擁をねだってくるとは。
素直に頼んでいれば、まだ可愛げがあったものの…。
はぁと溜息を吐き、昨日のことを思い出しているとみょうじが後ろから小突いてきた。
振り返ると、楽しそうに微笑む彼女。
ああ、これは不味いぞ。
昨日と同じ展開だな。
たじろぐ我輩をよそに、みょうじは少しずつ距離をつめてくる。
どん、と背中に何かを感じ振り返ると、いつのまにか壁際にまで追い詰められていた。
ここぞとばかりにみょうじはぐっと一気に我輩との距離数センチまでつめよる。
そして、我輩のローブをその小さな手で掴み、下からのぞきこむ。
「今日は、何の日でしょーかっ!」
ああ、やっぱり。
「またそれか…」
「ええ、またこれです!」
嬉しそうな顔をするんじゃない。
我輩が大層不愉快なのに気が付け。
「…それで?今日は何をするつもりなのかね」
「大きな声で言うのは恥ずかしいので、耳をかしてください」
仕方がなく、我輩は身を屈め、ぐっと頭をさげてやる。
すると、頬に柔らかな感触。
みょうじが、口づけてきた。
「スネイプ先生、大好き」
顔を見ると、頬を赤らめ恥ずかしそうにはにかむ。
「今日はね、ハートの日なんです。その、だから、心を伝える日なのかな、って」
「そんなこと、」
わざわざ言わなくとも、知っている。
それなのに、
少しでも喜びを感じてしまう自分が愚かしい。
頭をあげ、右手で顔を覆いながら小さく息を吐く。
みょうじが「先生?」と可愛げのある声で眉をさげながら見上げてくる。
怒っていないかどうか不安なのか。
さて、どうしたものか。
昨日に引き続き、やられっぱなしの我輩だと思うなよ。