人の血 鬼の血

□第6章 許サレヌ温モリ
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「土方さーん」

「あ?なんだ、総悟か」

「風呂どうしやす?」


「あー…先入っててくれ。これ片付いたら行くわ」
「大変ですねィ」

「一応言っとくけどてめーの始末書だからな」

土方がくわえタバコを指で挟んで煙をふかす。

じとっと向けられた睨みに、俺は頭に手をやった。

「あぁらすいまっせーん」

「すいまっせーんじゃねーよ!
反省しろ反省!」


へーへーと適当に小言をかわして、俺は廊下にでた。

涼しい夜の空気を吸う。


「あ、お疲れ様です沖田隊長!」

「おう」


任務から帰ったのか、隊士達とすれ違う。

手を挙げてあいさつをかわすと、どこからか近藤さんの笑い声が聞こえてきた。



「…あり?

こんなとこでなにしてんでィザキ」

「あ、沖田さん!
ちょっと息抜きにミントンを…」


「山崎ィィィィィィ!!
てめっ仕事どーしたァァ!」


「ふっ、副長!
すみません、ちょっと…ギャァァァァァ!!!」


土方さんが、ラケットを振り回していた山崎をボコる。

山崎は情けない悲鳴を上げた。


「はぁ〜」


俺はため息をつきつつ、呆れ混じりに笑った。

赴きのおの字もねー夜だな。もう少ししんみりできねーのか。

騒がしい、いつもの屯所を眺める。


まァでも………

これが俺たちなんだろーな。


男だらけのしょーもねー集団だけどいつか、そういつか。

いつか、千鶴にも見せてやりてーな


ここが俺の場所なんだぜ。

月明かりでほんのりと青い夜空をみて、そんなことを呟く。

虫の音が俺の胸の音をなだめるように、凛と体に染み渡っていった。



同時刻

あいつがどんな思いで この夜の中にいるのかも知らずに――――






**********





わたしは知っている。

人間の不思議さも
優しさも
あたたかさも。

わたしはそれに触れてはいけない。

許されぬ憧れに手を伸ばすことで生まれる惨劇の果てを、わたしは知っている。




許サレヌ温モリ

闇の奥で、うずくまるだけ。

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