ドロップ

□第11戦 気づいたこと
3ページ/3ページ



花音が出て行った扉を、俺はしばらく見ていた。
可愛い奴…。

再び、ごろんと横になる。
真っ青な晴天が広がっている。

花音が、唯一怖がる天敵だ。
――にしても、どうしてあいつはこんな天気の日に屋上に上がったんだろうか。

それは今日だけの疑問ではなく、毎日に共通する問題であった。

あいつが求める雲はない。ひとつもない。
なのに、なんで………?


『誰かが雲にならなきゃいけないのよ』

あいつの言葉が頭の中で繰り返される。

こんな空を見ながら、いつも彼女はどんなことを考えているんだろう?

「教えてくんねぇかな」
呟いてみるも、その声は何もない空に飲み込まれる。


「花音…あんたァ一体……何を隠してるんでィ」

話して欲しい。
抱えないで欲しい。傷つかないで欲しい。


だって―――


「大事なんでさァ」


知っていた感情だ。

俺はあいつに惚れている。

「俺ァどーにも、お前を超絶の不良だなんて思えないんでさァ」

素行の裏にはなんかあるに決まってる。
馬鹿さは優しさの裏返しに決まってる
ずっと見てきたんだ、ずっと。

花音、お前の隣で。
お前がホントはすごくすごくやさしいやつだって…わかってるから。



気づいたこと

彼女に恋した。
動きはじめた 闇の中で―――――
ドロップ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ