人の血 鬼の血
□第0章 我ハ鬼ナリ
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風が吹く。
渇いた、冷たい、かすかに鼻につく匂いをのせて。
――此処はどこ?
声がする。
冷めた、やかましい、虫ずが走る 醜い野心を帯て
――あれは誰だろう?
血がうなる。
飢えた、抑えがたい、相反する魂をものともせず全てを壊す非道な情を込めて。
――私は何者?
花が揺れる、紅い花弁を揺らした。
はらはら舞って最期のひとひらを
地に落として――
――――――嗚呼 そうだ
紅いはなびら、赤いヒトの血
舞い散らすのは全て――
目を開いた。
目覚めたとき、それは凶暴な血に生きるバケモノと化す。
止められないし止めもしない。
張り裂けそうな胸の痛みも、すぐに感じなくなる。
このときの私は、まだ何もしらない。
これからはじまるもの、終わるもの、得るもの、そして失っていくもの。
まだ知らない。だって、だって私は。
私は…
――我ハ鬼ナリ
すべてをすてて修羅となれ。