人の血 鬼の血

□第3章 違ウ風
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「総悟ォォォォォォォォ!
どこだ、パトロールだっつってんだろ!!」

「ッチ、うるせー奴が来た」

アイマスクを外すと、刀を振り回して屯所から出ていく土方の姿が視界の端に映る。


「残念土方さん、今日は外じゃねーんです」


快晴の空の下、俺は屋根に寝そべり直した。
なんとも気持ちのいい昼下がりだ。




『マネープリーズ』


無表情に目を開いた。
ふと女の声がよみがえったのだ。


がらりと瓦を鳴らして思わず起き上がる。

…初対面の男に、マネープリーズって。


「…ハッ…」


再び目を閉じながら、思わず鼻を鳴らして少し湧き上がったおかしさに笑った。

なにより俺と同じ色をした、蘇芳色の目。

赤い目は、血濡れた赤だと思っていた。俺が実際そうだったからだ。

それでも、あの女の瞳に宿っていた光はとても綺麗だった。

女はこぎれいな容姿だったし、底なしに強かった。

この町にも、まだまだ面白いやつがいるもんだ。



―――きっと、また会える―――――



ならば。

「よっと」


俺は起き上がった勢いのままに、屋根からふわりと飛び降りた。



「うわああああ!!!」

「沖田隊長が空から降ってきたァァァ!」


「んなわけあるかィ」


下にいた隊士たちが騒ぐのを丸無視しながらすり抜ける。


「おいおめーら、俺ァパトロールに行ってきまさァ」


「「「はい!!いってらっしゃい!!」」」



――――ならば、俺が会いに行けばいい。
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