人の血 鬼の血

□第6章 許サレヌ温モリ
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いつもの深い夜だった。

虫の声だけがやけに大きく聞こえて、なにもかもが闇の中。

己を確かめるのは、忌ま忌ましい血を送り出す心臓の音だけ。

漆黒の闇の中、畳の上で。
あたしは赤い目をひらいた。



「沖田…総悟」



男の名前を呼んだ。

否、呟いた。



「真選組なんか…」



真選組なんか、はなからあてにしてないし信じてもない。

誰が強かろうが、誰が有能だろうがそんなことは知りやしない。


我等に勝るものなし。

そう教わってきた。





―――なのに




最近、思い浮かべるのはいつもあの人。


どうして?


あの人の顔を浮かべては、何かを思い出そうとしている。



何か―――――



自分と、重ねようとしている。



確かにあの人は、一番隊隊長として活躍し、その強靭なる剣術は真選組最強をうたわれている。



――でも。



私と繋げるものは、何もないだろうに。



『あんた…大丈夫ですかィ?』


「―――なんで―――」



なんで、私の心配をするの?真選組最強の隊士が。


『いいじゃねーかィ、彼氏なんだから。』


『千鶴、今からでもその服メイド服に変えねェかィ?』


なんで、あたしに普通に接してくれるの?

冗談いったりボケてきたり。

――沖田隊長だけじゃない。
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