人の血 鬼の血

□第7章 強イ眼差シ
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「首尾はどうだ?トシ」

「全くだ。勘づかれたのかもしれねェ」

俺はおおきなあくびをした。
涼しい風が、体中にしみわたっていく。


「オイ総悟!お前もまじめに働け!」

「働いてまさァ今ちょうど土方抹消計画を実行に移そうと考えていたとこです」

「なんの仕事だァ!!」

すぐにヤローと掴み合いになる。
ああ、ほんとこの人は短気でいけねぇや。

「トシ総悟いい加減にしろ!!

この場所がダメならほかの場所を当ってみよう。
早くしないとお妙さんが家に帰る時間になってしまう!」

「あんたがいい加減にしろ!」


町の中心部で騒ぐ俺たち。こころなしか人々の目が白い。

そりゃそーだ、攘夷浪士を追っているはずの真選組がこんなとこで世にも下らない言い争いを繰り広げてんだ。

…ま、発端は俺だけど。


「山崎ただ今戻りました!」
「おお、どうだった?」

「やはり奴らはこの町にいるとみて間違いなさそうですよ。

聞き込みの結果、この先にある稜花屋が怪しいとのことです」


山崎の報告に、軽く頷く土方さん。

「よし、それなら稜花屋とやらへ行くぞ。」

「へェ。」


町の中心部を北へと進む。歩きながら、俺はその大通りにデジャヴを覚えた。


―――あァ―――

千鶴と再開した団子屋がある通りだ。
かぶき町まで来たみてーだな。

向こうの方を見る。
目を凝らしても、ごった返す人の中からアイツを見つけ出すことなんて出来やしねー。

わかってる でも頭は探してる。同じ瞳を、探してる。


「稜花屋に仮に浪士共がいたら…突撃かァ?」

「ですが副長、奴らは仲間と合流するつもりです。

相模の方の仲間が昨日動き出したとのことですから、」

「張り込んで合流したとこをまとめてたたくと」


言葉を繋げた土方さんに、山崎が首を縦に振った。


「張り込むなら今日は場所や位置の確認も済ませねェとな」

「急ぐ必要はなさそうだな。じゃあ俺はお妙さんのところに行ってくるぞ、トシ」

「ホント懲りねーなあんた」

近藤さんは言うや否や本当に通りを引き返し始めるし、土方もそれを咎めるつもりはないらしい。

急がねーなら、またあの団子屋に行こうかな。

そんな事を思いつつ、ぼんやりと町の通りを眺める。 千鶴がこんなとこに、いるわけねーとわかってはいるけど………


「土方さーん、急がねェなら団子屋寄りましょーや。うまいんですぜ、あそこの団子」

「あ?団子?」


「あそこの店でさ」

「あぁ…あれか。
確かに腹減ってんな。寄ってくか」


意外にも乗り気な土方さん。
珍しい事もあるモンだ。

見えてきた団子屋に目をやる。






俺は目をこすった。
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