人の血 鬼の血
□第9章 歯車ヒトツ
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いつもの如くパトロールをしていた(サボっていた)俺は、前方に揺れる見覚えのある色をした髪を見て、だっと駆け出した。
「千鶴〜」
「?」
振り返った千鶴は、俺を見て蘇芳色の目を見開いた。
「あ、沖田隊長」
おはようございます、と頭を下げる千鶴の髪をひっつかむ。
「いだだだだハゲるハゲる!!」
「おかてぇことしなさんな。おはようでいいだろィ」
「……おはよう」
目を若干潤ませて、頭を押さえる千鶴。
ったくこのおじょーちゃんは、そういう顔はS心をくすぐるだけだってのがわかんねーのかねィ。
「沖田隊長、今日もサボ………パトロールお疲れ様」
「今明らかにサボりって言おうとしたよな」
え…だってサボりじゃん…と遠慮がちに呟く千鶴。
まぁその通りなんだけど、そうあからさまに指摘されてはこちらも立場がないのだ。
「他のみんなは?」
「ん?みんなそれぞれの仕事してまさァ。
見回りとか張り込みとか書類処理とか。」
「で?隊長はそれが己の仕事だとでも言うおつもりですか?」
「文句あんのか?」
黒い笑みを浮かべると、千鶴は頭をブンブン振ってううん、と言った。
「真選組って、なんか思ってたのと全然違う」
「どーゆー意味でィ」
「……あったかいよね」
寂しそうに、でも少し嬉しそうに千鶴は笑うのだ。
「あったかいよね、みんな」
「………千鶴」
俺はそんな彼女の手を、気付いた時にはこの手で掴んでた。
「お、きた……?」
「ついてこい」
わからせてやりたかった、見させてやりたかった。
俺は、こいつのこんな隔たりを感じるような笑顔がみたいわけじゃない。
似た者同士なら、とことん俺に巻き込んでやるよ。
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