ドロップ

□第4戦 雲のない空
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あれから、俺はちょくちょくB組に足を運ぶよう になった。

その日課に、別段深い意味があったわけではない。

ただ、今日は来てんのかとか またやんちゃしてから来たのか とか何となく気になるので確かめたかった。

その度に、周りの女の子たちは騒ぎ、対称的に花音は鬱陶しそうに眉をひそめた。

だがんなことでめげる俺じゃねー。嫌がられると余計やりたくなるのがSの性ってもんでさぁ。

若干嫌がらせの意を含めて、今日も懲りずにここまできた。

…今日は珍しく登校時間に校門をくぐっていたのを見た。

話し掛けようとしたら近藤さんにつかまっちまったけど。


きっと窓側の席で、いつもの様に外を眺めてる。






俺はひょいと顔を出し、声を上げた。

「境花音〜いるかィ」


教室が一気に騒がしくなる。
だが全ての感覚はきちんと働かなくて。ただひとつ、見えたのはぽっかり空いた窓側の空席だった。


「…あり?」


なんでいないんだ?今朝は確かに…

「あ、あの… 花音ちゃん、今日は来てないですよ」


怪訝に見つめていると、ふいに聞きなれた声がした。


「また遅れてくるんじゃないかな…」

あの気の弱そうな女だった。その言葉に眉をひそめる。…遅れてくる?
そんなバカなことがあるはずねェ。
だって、俺は今朝、確かにこの目でアイツを見たんだ。


「…一回も…教室には来てないんですかィ?」

「はい…」

おかしい。
もやもやした黒い疑問が 心ん中で渦巻いてる。

なんでだ?

今朝、確かに校門をくぐっていた。なのに教室に来てないなんて、そんなことありえない。


女の不思議そうに見つめる目にも気づかず、俺は悶々と自問自答を繰り返しながらB組の教室を後にした。
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