ドロップ

□第8戦 猫そっちのけ
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ドゴッバキッという鈍い音が繰り返しくりかえし響く。

「ゃ……やめっ…」

あえぐような声に、容赦なく痛烈な平手が入る。

「いた……」


うめき声があがる。その声の主を容赦なく痛めつける、卑劣な音。

「痛い?いいんじゃない?たまには」


「そーそー。
優等生さんも少しは苦労を味わわなきゃね」

「あぅっ………ッ…」

声にならない声で、何かを必死によぶ少女。その姿を嘲るこえが、上からふってくる。

世界中が笑ってるんだ。

「はははは!」
「無様ー」

「や…もう……やめ」

「なぁんもきけない口にしてあげようか?」


足が振り上げられる

少女は覚悟を決め、ぎゅっと目をとじた。


「いくよー」

次の瞬間響いたのは、先程までの鈍い音…

ではなく。
どおおおんという凄まじい音とつんざくよう悲鳴。

だがその悲痛な叫びは、うずくまる少女のものではなかった。

「なっ、誰!?」

「やばい、せんこーか!」

立ち込める灰褐色の煙り。

そしてそのスモークにうつったシルエットは 確実にこちらへ近づいていた。

パキ…
ガラスをかたく踏みしめる音が小さく、でも確かに聞こえる。
いる。

近づいてくる、間違いない人の気配…


「…!!! あれは…っ」

「こんにちは。ずいぶん楽しそうじゃない?

ねえ、

あたしも混ぜてよ…」

「ひ、ひぃっ!」
「アンタは……!」


口をパクパクさせながら、つい先刻まで1人の弱者をいじめ嘲笑っていた者たちが転がるようにその場を去っていく。


「…はあ、逃げるなら、最初からやらなきゃいいのに」

「あっ、ありがとう花音ちゃん…!」

『黒い女』は不敵に笑んだ。
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