ドロップ

□第10戦 遠回しのキス
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「花音ーーっ」
「げっ」

「げっとはなんでィ」


昇降口を眠気とともに歩いていた。
うざいのにつかまってしまった。

だがため息はもう上がってこなくて、あたしはいつものように下駄箱をあける。


「………?」


私は動きを止めた。
靴の上になにかのってる。 四つ折にされた、白い―――


「どうした?」
「なんでもない」

表情を変えずにその紙きれをポケットに滑りこませて、下駄箱を閉じた。


「今日はハッピーマンデーでさァ」
「ふぅん」

「朝から花音に会えやしたからねェ」
「………ふぅん」


沖田の話を、適当に流す。

コイツの言うことにいちいち付き合っていたら、いくら驚いても足らないことが最近やっとわかった。

「花音は?」
「何が?」

「今日の気分」
「………コーラ」

「は?」

どういうことですかィと怪訝そうな顔で聞かれる。

私はつんとすましたまま下駄箱を抜けていく。

「朝来る途中でコーラもらった」

「へぇ。花音にもそんな友達がいるのか」
「ううん、別に…知らない人にもらった」


そう言った瞬間、沖田が目を剥いてこちらを振り返った。

「知らない奴?」

そのあまりの勢いに私はちょっと体を引く。

「う、ん」
「どんな」

「大学生くらいの男の人」
「男!!」

心なしか沖田の手が震えてる。

……どうしたんだろう、大丈夫かこいつ。

もうすぐ死ぬのかな?
それだといいな。
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