ドロップ

□第12戦 この胸に宿る憶測
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風が吹いた。
湿った、とても不快な。

あたしはゆっくりと目を開く。
妖しい風に揺れる髪を押さえた。

黒髪の間から窓の外をのぞくと、なんとも言えない空が。

さっきまで、快晴だったのに……

呟いて、だがそれを気にとめることもなく ただ厚く覆う雲を見つめていた。

―――――行かなきゃ


白い紙きれのふちををそっとなぞり、あたしは息をつく。


さすがにあたしも気がつかなかった。
このときは―――





あたしを結ぶ糸がからみ、このアンバランスな、でも心地よい距離が
じわじわと狂いだすなんて―――――――




***********





花音が屋上から出て行って、しばらくたった。
俺は 鉛の如く渦巻く不快な空を見上げる。

なんでェ、さっきまであんな晴れてたのに。

こりゃあ一雨きそうだねィ………


さてここから引き上げるか、賭けにでるか。

くだらないことを頭の中で葛藤させる。

起き上がる気力はとうになく、やっぱりこのままダラダラしようかと考えを巡らせる。

ごろんと寝返りをうった そのとき、ひんやりした風が滑りながら体を突き刺した。

その瞬間だ。
ゾクッと走った寒気に思わず身震いする。

なんだ、今の風。

鳥肌のたった腕にそっと手を添えた。




そんなはずはねぇ、
あいつに限って、そんな。

……だけど……

もしあいつの正体が暴かれるとしたら…?
真の姿が、この瞳に映るとしたら?

俺は足を大きく振って、飛び起きた。


真実なんて…この目で見なきゃ納得できるわけねーだろィ?

気持ちなんざこの手で伝えなきゃ通ずるわけねーだろ。

行こう、確かめよう。
何かが起こってる―――

この勘を信じて。
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