ドロップ
□第12戦 この胸に宿る憶測
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風が吹いた。
湿った、とても不快な。
あたしはゆっくりと目を開く。
妖しい風に揺れる髪を押さえた。
黒髪の間から窓の外をのぞくと、なんとも言えない空が。
さっきまで、快晴だったのに……
呟いて、だがそれを気にとめることもなく ただ厚く覆う雲を見つめていた。
―――――行かなきゃ
白い紙きれのふちををそっとなぞり、あたしは息をつく。
さすがにあたしも気がつかなかった。
このときは―――
あたしを結ぶ糸がからみ、このアンバランスな、でも心地よい距離が
じわじわと狂いだすなんて―――――――
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花音が屋上から出て行って、しばらくたった。
俺は 鉛の如く渦巻く不快な空を見上げる。
なんでェ、さっきまであんな晴れてたのに。
こりゃあ一雨きそうだねィ………
さてここから引き上げるか、賭けにでるか。
くだらないことを頭の中で葛藤させる。
起き上がる気力はとうになく、やっぱりこのままダラダラしようかと考えを巡らせる。
ごろんと寝返りをうった そのとき、ひんやりした風が滑りながら体を突き刺した。
その瞬間だ。
ゾクッと走った寒気に思わず身震いする。
なんだ、今の風。
鳥肌のたった腕にそっと手を添えた。
そんなはずはねぇ、
あいつに限って、そんな。
……だけど……
もしあいつの正体が暴かれるとしたら…?
真の姿が、この瞳に映るとしたら?
俺は足を大きく振って、飛び起きた。
真実なんて…この目で見なきゃ納得できるわけねーだろィ?
気持ちなんざこの手で伝えなきゃ通ずるわけねーだろ。
行こう、確かめよう。
何かが起こってる―――
この勘を信じて。