人の血 鬼の血 徒然編

□第16章 癒ス日射シ
1ページ/4ページ





ごろり。

何かが開く音と、途端に放たれた白い光の気配にあたしは目をぎゅっとつぶり、それから薄く開いた。


「………ん?」


「そろそろ起きて下さい、千鶴さん」

閉ざされた世界に光がもどってゆく。
ぼんやりとした視界にうつったのは、ぼんやりした男だった。

「何それどういう意味ですかそれ
景色と同化してるってことですか」

「あーまって、何か思い出しそう」



額に手を当て唸るあたし。

知ってるよ、この人。

「あ、あ、」
「頑張ってくださいよ」

「あーわかった、崎山くん!!」

「おしい!反対ですっ」

「マヤキサ!?」

「そーいう反対じゃねェェェ!」

「あー思い出した!ジミーだ!!」

「なんでだァァァ!!
崎山の反対だっつってんだろーが!」


一通りの会話のあと、この人は『山崎』たる男だということが判明した。


「いや、判明ってね?ついこの間ミントンで対決したよね?」

「過去は振り返らないって決めてるの」

「振り返って!よく見て!
過去に大事なもの落としてきてるよ!」


いやー面白いなコイツ。打てば響く反応の良さに自然と顔に微笑みが浮かぶ。

口元を綻ばせながらふと時計に目をやった私は、瞬きをした。


「おーいジミーくん、時計が11時で止まってるよ」

「ジミーで確定なの?
止まってませんよそれ、正常に動いてます」

「………え?」


じゃあなに?
今……午前11時?

「そういうことになりますね」

「いやぁぁああああ」


人様の所帯におかせてもらって、いきなり寝坊したのあたしって奴はぁぁあ!!!

「あ、ちょっいきなり動くと傷に障りますよ!」

「ぐぉぉ……」


お腹を押さえて布団に倒れ込む。
はー、とジミーがため息をついた。

「ほんと沖田さんの言う通り、落ち着かない人だ…」


「てめー余計なこと聞いてんじゃないわよ!
しかも沖田隊長に言われたくない!」


傷をさすりながら吠える私は、ゆっくり起き上がる。

正座をすると、呆れかえっていたジミーがわずかに首をひねった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ