人の血 鬼の血 徒然編

□第19章 優シサガ少女ヲ傷ツケル
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ぽかぽかとした陽射しが暖かい。

鮮やかな色彩を失いかけた葉を優しく照らす。
からっ風をうけながら、あたしはすぅと息をすった。

『万事屋銀ちゃん』


いるかな?

手に提げたビニール袋をにぎりしめ、鉄の階段をのぼり始める。

かん、かん、からんと、錆びた階段を上音が重く響く。

登りきると深呼吸して戸の前にたった。

よし。

頷いて戸の横にあるボタンに指をかけ、思い切って押してみた。


ピーンポーン…と鳴り響いた音にたじろくと、中でエコーしているのが聞こえた。

そんなに大きな音でなくてよかったんだけど…

しかし、再び訪れた静寂。
いないのかな?

名乗るために声をあげようと口を開いた、まさにその時だった。


「家賃はもうねェって言ってんだろーがァァァァァァ!!」


ドォォォゴン!!!

ものすごい音と共に突然前の扉が外れ次の瞬間、銀髪が目に入った途端に黒い靴底が飛び出してきた。


「うああああっ」


心の臓が跳ね上がったのもつかの間、次の時には視界がまっくろに染まった。











「ごめん!ほんっとごめんって!

許して千鶴ちゃん!」

「ごめんで済んだら真選組はいらないわ。

簡単な話でしょ?腹切ればいいの」

「簡単じゃないよ!人ひとり死ぬよ!

てかてめぇどこで真選組なんて言葉覚えてきやがった」

「とりあえず死ね天パ」

かかとにぐりぐりと力をこめる。

傍若無人とばかりにはねまわる銀髪が揺れ、うずくまった男が情けない声をあげた。

そのシュールな光景を、少年少女が固唾を呑んで見守っている。


「あの…千鶴ちゃん、そろそろ許してくれないかな?

ほら、あいつらの教育に良くないかなって…」

「若いときにそこの厳しい世の中の現状を知らなくちゃ」

「いやウチそんな鬼みたいな躾してないので!優しく楽しくがモットーみたいな?そんなあたたかな家庭をめざしておりますのでぇぇ!」

うっすら汗を滲ませてる銀髪の懇願は聞き入れてもらえず、冷淡な目が床へと突き刺さった。

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