人の血 鬼の血 徒然編

□第20章 去ルカ
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「……よし」

ほどいた包帯からのぞく白い手。

傷ひとつないまっさらなその肌爪に、あたしはなんとも言えない気持ちで自嘲ぎみに笑んだ。


「お、治ったのかィ?」

「わァァ!」

突然背後から聞こえたその声。

驚き手を胸でにぎりしめたまま振り返ればポーカーフェースの端正な顔。

「るっせーな、びっくりすんだろ」
「そらこっちの台詞だっつーの!」

大体女の子の部屋にノックなしで入ってくるなんてどんな神経してんだこの人!

「え?女の子………?

……あ…ああ、そうだねィ」


「えーい待てぇえい!なんだ今の妙な間は!」
「いや、いや、大丈夫。
あれだよな、つまり雌を飼ってる檻ってことだよな」

「いや何が大丈夫なんだそれほとんど動物園だろーが!」

「ゴリラもいますぜ」

「前から気になってたんだけどさ、あんた近藤さんのこと敬ってるみたいだけどちょいちょいゴリラって言ってるよね」

なんのことでい?と首をかしげる隊長。

そんな可愛い顔したってダメだ。

このドS男を前に、私は女の子云々の以前に人類の枠にも入れなかった。

なんって遠慮のない人だろう…。


「もーわかったから、とりあえず出てくれない」
「やでィ」

「いや、やでィってあたしもやだから」

どっかり座った隊長は動く気配もない。
何しに来たんだろ。

「着替えるから」
「着替えればイイじゃん」

「何言ってるかわかってんのあんた!」

「別にお前のペチャパイなんざ興味ありやせん」

「おーい隊長、殴ってイイ?ねぇ殴ってイイ?」

ぷるぷると震える拳を軽く振り上げるあたしを片手で制しながら隊長は立ち上がると、ウインクしていった。

「じゃあ俺10秒だけ外にいますんで、その間に着替えなせェ」

「無理だろ!あんた絶対待つ気ないだろ!」


ぴしゃりとしまった襖。
ため息をつきつつ、仕方がないので私は猛スピードで着替えた。
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