人の血 鬼の血 徒然編

□第23章 赤キ瞳ハ
1ページ/4ページ



一瞬にしてデパートを混乱に落とし込めたそれは、地が震えるような爆音だった。


「テロか!?」

土方たちが目を見はって顔を上げる。

神楽も天井を見上げ、その頬からぽろっとブラウニーのかけらが落ちた。

「とりあえず一旦この会場から出るぞ!トシ、ザキたちに連絡してくれ」


沖田がちらりと隣を見ると千鶴が天井を穴があくほどじっと見つめており、その不自然とも言える無機的な落ち着きに沖田は近づかずにはいられなかった。


「千鶴、行きますぜ」


華奢な肩に手をかけるとぱっちりした目が振り返る。


「うん」


案外大人しく椅子からおりて俺についてきた千鶴の手を引き土方たちに続いた。

ばらばらと足音を響かせて会場の外の通路を駆け抜ける。

人が逃げてくる方――あきらかに北館で爆発はおこった。

幸い火災は発生していないところを見ると、小規模な爆弾による俺たちへの挑発か。


「しかしそれにしても早いじゃねーか…まだ犯行予告の時間まで3時間はあるぜ」

「元々あってないようなモンでしょそんなの

呑気にスイーツなんざ食ってた土方さんのせいでさァ」

「てめーが発案したんだろーが!」

青筋をたてて走りながら振り返る土方にポーカーフェースで返す。


「俺と千鶴だけ食えればよかったんでィあそこは土方さんが警備につくべきです」

「ほんと帰ったらしばくからなてめー!」


上品な灯で飾られた小綺麗な連絡通路を渡り北館へ入る。

混乱する店員たちの話によると、どうやら爆発は3階で起きたらしい。

示された通り中心部まで進んだその時だった。


「天誅!」


ズガガガガガガ。

割れるような音が断続的に響き、一同はさすがの運動神経でとっさにひらりとかわす。

中心部にはいかにもデパートらしいエスカレーターが螺旋になってはるか上空まで伸びている。

各階にはそれを囲うように柵があり、一階の広場が見下ろせるようになっていた。

全員が難無く銃撃を避けていき、土方が叫ぶ。


「御用改めである!真選組だ!」


煙幕が徐々に晴れてくると一階上から現れる人影。

着流しをだらし無く纏った集団だった。



次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ