短篇集

□野菜のくせに
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「おいしいですぜ」

「………」

「みずみずしいんでさぁ」

「………」

「食べたら遊びにいきやしょう」

「………」

「はやくしねぇと、いつまでもこのままですぜ」

「……総悟のバーカ…

副長の鬼」

「全部きこえてっからな」


俺はため息をついた。

柔らかな日差しが差し込み、2人が向かい合う机に淡い光となっておちている。

その机に頬杖をついた。


「あと訂正、鬼は俺。クズは土方さんでさぁ。」

「いやクズは言ってないよ」


反抗的な目でにらんでくる桜子。

そんな目したって無駄だ、Sの心を煽るだけでさァ。お前も知らねー訳じゃねェだろ?


「食べなせェ」

「いやっ」



桜子はぷいっとそっぽを向いてしまった。

束ねた長い黒髪がゆれる。

…あーあー、可愛い………

…じゃなくて。

気を持ちなおして椅子に深く腰掛けるとさらに踏ん反り返ってみた。

心の中でコホンと咳をして強い瞳に向き直る。


「上司に逆らうんですかィ」

「あたしは上司とは思ってない、

だから従わなくていい。」


なんだその俺様的思考。

すべての基準は自分か?

自分がよければ全てよしか?


こういう奴だ、桜子は。

恐らく自分を中心に地球は回ってると思っているだろう。

俺は今日何度目かのため息をついた。


なんでこういう会話に至ってるのかというと、事は昨日の晩にさかのぼる。


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