短篇集
□愛をのせて 願い星
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どっぷりした夜だった。
どっぷりってどーゆー夜と聞かれても困るけど、しいて言えば…深い闇に沈んだような。
とにかく、いつもより深い夜だったんだ。
「どこ行くの隊長?」
「いいとこでさァ」
「……隊長のいいとこは怪しいから嫌」
「そんなにシてーのか」
「パトカー壊しますよ」
吐き捨てると、そりゃあ困りやすねィとか言いつつ鼻歌交じりに運転を続ける。
どーせまた勝手に持ち出したんだろう。
……なんか、どんどん暗くなってくんだけど…
この車、どこに向かってるんだろ。
あたしは冷たい窓ガラスに頬を擦り寄せた。
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「桜子〜着きやした。起きなせェ」
「ん………」
重いまぶたをこする。ぼんやりしたまま車をおり、隊長に手を引かれながら歩いた。
草のにおいと風の音。
真っ暗な夜道で、それらを感じ かなりの田舎だと判断した。
「隊長……ここどこ?」
「いーから、こっち来なせィ」
繋いだ手を、ぎゅっと握られる。寝ぼけながら、なんとなく握り返した。
「ここに寝転びな」
「ここ…?」
草の中に腰掛け、仰向けになる。
背中に伝わる、夏夜の冷たさ。
「!?たっ…たいちょ」
「今からちょっと、お前にプレゼントをやりまさァ」
間髪を入れずに覆いかぶさってきた隊長に、心臓が暴き出す。
眠気は、確実に薄れてきていた。