短篇集

□愛をのせて 願い星
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どっぷりした夜だった。
どっぷりってどーゆー夜と聞かれても困るけど、しいて言えば…深い闇に沈んだような。

とにかく、いつもより深い夜だったんだ。


「どこ行くの隊長?」
「いいとこでさァ」

「……隊長のいいとこは怪しいから嫌」

「そんなにシてーのか」
「パトカー壊しますよ」


吐き捨てると、そりゃあ困りやすねィとか言いつつ鼻歌交じりに運転を続ける。

どーせまた勝手に持ち出したんだろう。


……なんか、どんどん暗くなってくんだけど…

この車、どこに向かってるんだろ。

あたしは冷たい窓ガラスに頬を擦り寄せた。






***********




「桜子〜着きやした。起きなせェ」

「ん………」


重いまぶたをこする。ぼんやりしたまま車をおり、隊長に手を引かれながら歩いた。

草のにおいと風の音。

真っ暗な夜道で、それらを感じ かなりの田舎だと判断した。


「隊長……ここどこ?」


「いーから、こっち来なせィ」



繋いだ手を、ぎゅっと握られる。寝ぼけながら、なんとなく握り返した。



「ここに寝転びな」


「ここ…?」



草の中に腰掛け、仰向けになる。

背中に伝わる、夏夜の冷たさ。



「!?たっ…たいちょ」


「今からちょっと、お前にプレゼントをやりまさァ」


間髪を入れずに覆いかぶさってきた隊長に、心臓が暴き出す。


眠気は、確実に薄れてきていた。
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