短篇集

□ふわり
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「銀ちゃ〜ん」
「あ?」

ソファーに寝転がったまま、ジャンプから目を離さない銀ちゃん。



「…ねーねー」

「なんだよ」


そっけなくも聞こえる声に、私はむっとした。

彼女が来てんのに、ジャンプの方が面白いってのかこの人は?

いいわ、私を無視だなんていい度胸してるじゃない…思い知らせてやる!

あたしは立ち上がり、意を決して銀ちゃんの上に飛び乗った。


「どーーーん」
「ぐぇえ゙っ」


銀ちゃんの手からジャンプが吹っ飛ぶ。


「ゲホッゲホッ……なんか出た、なにか内蔵的なものが出た!」

「あたしは象か」


ほっぺたをペチ、と叩く。

構ってもらいたくて、あたしは顔を銀ちゃんの服にぎゅーっと押し付けた。


「構ってよーっせっかく来たんだから…」

「あーもうハイハイわかりましたよ」


銀ちゃんは仕方ねーなと頭を書きながらジャンプを机に置くと、あたしの頭をぽんっと撫でた。


「…君シャンプー変えた?」

「おっわかります?」

「匂いが違う」
「…銀ちゃん…変態っぽいよ」

「ほっとけ」

あたしの髪をいじくる銀ちゃん。くすぐったくて身をよじった。


「いいなーチクショー俺もこんなストレートがよかったなー」

「銀ちゃんは天パだから銀ちゃんなんだよ」


ふわふわの髪に手を伸ばす。そっと触れると、銀色が揺れた。


「髪のびた……?」
「あー、最近床屋行ってねェな」


少し長くなった銀髪は、耳にかかっている。
くるくると指に絡めて弄ぶ。

「ね、切ってあげようか」
「あ?いいよ、別に」

「遠慮しない!やらせてよ」
「なんでお前そんなノリノリなの」


「一回やりたかったの〜!」

そう言うと、あたしは鼻歌交じりに銀ちゃんを洗面所へ連れて行った。

彼氏の髪を切ってあげる甲斐甲斐しい彼女…そうよ、女子力というやつ?を、見せつけてやるわ!
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