短篇集
□レッド・メッセージ
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部屋で雑誌をめくっていたとき、後方でドアが開く音がした。
振り向く間もなく、上から何かがのしかかってくる感覚。
無邪気な声がした。
「桜子みーつけた」
「神威」
少しだけ顔をひねると、にこにこ笑った(一応)彼氏がいる。
「(一応)とかつけることないだろ」
「いやぁ…何となく」
何か言いたげなその笑顔にしかしわたしは構うことなく、黙って再び雑誌に視線を落とし、神威を上に乗せたままぺらぺらとめくっていく。
神威はしばらくそれを黙ってみていたが、すぐにわざと体重をかけてきた。
「桜子〜お腹すいた」
「ん?あ、もうこんな時間…」
この男…やっぱり狙いはそれでしたか。
いいけどね別に!
わたしは神威を上からどかしながら尋ねる。
「阿武兎は?」
「あいつなら老院の連中に呼ばれていないよ」
じゃあ…今日はあたしが作るしかないか。
「…何が食べたい?」
「そりゃあモチロン、桜子…
「何が食べたい?」
…無視しないでヨ」
神威の爆弾発言を掻き消すと、少しむくれられた。
勘弁してほしい、夜が怖いじゃないか…。
可愛い顔をしてはいるけど、この男を宇宙一怖いと思っているわたしはぞくりとする。
機嫌を損ねないうちに早く夕飯を作らなくては!
わたしは立ち上がり台所へと向かう。
「あ〜なんか卵が沢山あったな…」
「じゃあ卵料理だ」
あれこれ二人で考えた挙げ句、オムライスを食べることにした。
「じゃあ作ってくるから…」
「俺も行く」
後をついて来る神威。
手伝ってくれるのかな。
「何したらいい?桜子」
「あ、やってくれるの?じゃあねー……」
「野菜切るよ」
「ストップ!ノー!ノーサンキュー!」
こいつに刃物を持たせてはいけない。
何がなんでも阻止だっ。
「神威はそこにいればいいから!何もしなくていいから!」
「ちぇ」
今残念そうな顔した。
やっぱこいつ野菜切る気なんてハナからないんじゃないの。
「よし、それでは開始しますか」
あたしは腕を捲った。
「神威〜ケチャップ」
「はい」
なんやかんやで大人しく指示に従う神威は、とっても役に立った。
受けとったケチャップを炒めたご飯にまぜていく。