短篇集

□がんばってる君に
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どうしようもなかった。
こればっかりは、本当に。



「お〜い桜子ちゃ〜ん生きてるー?」


教卓の前で立ち尽くすあたしに、銀八がけだるそうな声をあげる。


「生きてる…?

これは生きてると言うの?

死にかけてるわこんなの いや自分で気づかないうちにあたしはもう死んでいたのかも知れない」


「おーい!危ない!桜子ちゃんが死んじゃう!
ショックのあまり死んじゃう!」




カタカタと震える手で、禁断の紙をもう一度開く。

『41』

なに、41って。


「現実を見ろ鈴木、それはお前の数学の点数だ

ついでにいうとお前の3教科の偏差値だ」


「黙りなさいマヨ方!ちょっと点数よかったからって調子こいてんじゃないわよ!」

「いいじゃないアルか桜子、それ私の点数ひっくり返した数ネ!
奇遇アルヨ!!」


「うんおかしいね、41の反対は14だね?
嘘だよね?嘘だと言って神楽ちゃん」


喜ぶ前に反省しろや!

各々のテストの結果に一喜一憂、既に最大級の喧騒につつまれた教室。

銀八がぱんぱん、と手を鳴らした。


「はーい全部返し終わったな席につけー」

しぶしぶみんな席につくので、私もため息混じりに自分の席へと戻っていった。


「はい、じゃあまぁ2学期の中間も無事終了ってことで〜
…まあ中には無事じゃねー奴もいるが」


バツの悪そうな顔をして、やっべー、なんて笑う奴もいる。


「それぞれの成績を反省して、次に生かすように!

そんくらいか、気をつけて帰れよ。
あ、そうそう桜子は残れー」

「え゙!?」


「きりーつ、礼〜」

「「さよーならー」」



いやいや!
いやいやいや!!

おかしよーーっ!?

41って禁断の数字だったの?!
あたしなんかより大変な点数取ってるやつはごまんといるし、神楽の方がヤバいよ絶対!


「マジかよ〜桜子」

「総悟くーん、すこぅし待っててくれるかな?」

「いいけどねィ……
おちおち放課後デートもできねーな」


うう、ごめんね。
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