短篇集
□酒と女と朧月
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酔っ払った桜子は扱いが本当に面倒くさい。
ほろ酔いってやつを越えたあたりからゲラゲラ笑い出して、宵が深くなってきたらだんだん怒りっぽくなる。
それから偉そうに人に説教かまし、ヒートアップしてくると怒鳴りちらして騒ぐだけ騒いだら最後はお前、机に突っ伏して号泣だ。
なんなのホント。
最悪だよな、そのルート。酔っ払いの起こす行動ほぼコンプリートしてる。
フルコースだ。
フルコースで最後はデザートにとんでもない汚物吐き出すんだぜ。
なんで俺こんな面倒くさい女と付き合ってんだろ。
まあ突き放せないのは惚れた弱みってやつだ。
「そこに座れェェェ!
今から貴様に説教する」
「すんません日付変わったんスけど」
酒瓶をかかえ、顔を紅潮させて怒鳴る桜子。
んな可愛い顔したって無駄だから。
ちょいと二人で飲み屋に行っただけでこれだ。
今はちょうど説教モードらしい。
もう絶対おかしい、お前性別間違えたよ。おっさんだよ。
「貴様は女の扱いがなっとらん!」
「てめーは女の振る舞いがなってねェんだよ」
「そんなでは恋人に愛想つかされるのも時間の問題だぞ!」
「その言葉そっくりそのままお前にバットで打ち返してやりまさァ」
ため息をつく。
これも面倒くさいが、本当に面倒くさいのはこのあとだ。
最終モードになるまえに対処しねーと。
「わかったからほら、もう帰るぞ」
桜子の腕をつかんで立たせる。
重たっ、こいつ絶対わざとやってんだろ。
「やーだーまだ飲めるもん
やり直そう、飲み会初めからやり直そう!原点にリバースやぁ〜!」
「てめーは最終的にとんでもねェもんリバースするから嫌なの!
帰るぞほら!」
力づくで引っ張ると桜子は全力で騒ぎ出した。
「いやーだぁぁ死ねェェマヨラー副長!」
「オイ今なんつった
土方じゃねーよ俺ァ沖田だっつーの」
あーもームカつく。
色々。色々ムカつくんでィ。
ため息をついたとき、流れる雲が宵月を隠した。
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