ドロップ

□第2戦 恐れられし眼
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「聞いた?昨日また…」
「知ってる。…の公園で…」


あちこちから会話が切れ切れに聞こえる廊下の雑踏を、俺はふらふら歩いていた。

「あ…あれ…」

「沖田くんだ!」

「かっこいいっ」

湿気の多い風が頬を撫でる。今に始まった事ではない、微かだけどはっきり耳に届くささやき。

悪い気はしないが、いやむしろ照れくさいくらいだがこうも毎回ではむずがゆい。
居心地悪く廊下を歩いていると、突然 アナウンスが響いた

ピンポンパンポーン


「あーあー3年Z組の沖田くーん
大至急会議室に
「総悟ぉぉぉぉ!風紀委員の会議だって言ったろォォ!!」

…とにかく来なさい!」

「うるせーよ土方騒音公害なんだよ!死ね」

近藤さんの声が消えてんじゃねーか。


「はぁ…面倒くせェ」

さて、このまま素直に会議室へ出向いてやるか、サボるか…ふらりふらりと俯き加減に歩く。

やっぱサボろう、初志貫徹ってやつだ。
しょうもな言い訳を自分に言い聞かせてた、そのときだった。


ドンっという衝撃とともに体が弾かれ、おれはよろめいた。思わず床に手をつく。

「…ってー、なぁにしやがんでィ」

誰かにぶつかったのだと遅れてわかり、突然の衝撃に遭った俺はむくりと起き上がった。

「どこに目ェつけて歩いてんだ、ちゃんと避け…」

おお ラッキ、美人。

「…まァ、今回は許してやるから次は気をつけ…」
「謝れ」

綺麗な黒髪から覗いた反抗的に睨む瞳と、思いがけない言葉を吐いた口に、

「は?」

俺は間抜けな声を上げた。


「は?じゃなくて謝れって言ったの。痛いんだけど」
「いや… 俺も痛ェんですけど」

「ぶつかってきたのはそっちでしょ?」


反論すると、恐ろしく強暴な目で睨み付けられた。


いやいや、怖すぎだろ。なんつー強圧な目してんだよ…
柄にもなく、背筋をゾクリと寒気が走った。
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