ドロップ

□第3戦 性格は別として
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「ハイここ重要〜ライン引けライン」


銀八のけだるそうな声が響く。
あーあーめんどくせェ。

今頃境はさぼりを満喫してるんだろうか。
いや…それともどこぞのチンピラとでもやり合ってんのか?

「沖田く〜んやる気ある?」
「その言葉、そのままバットであんたに打ち返してやりまさァ」

「ひどっ!ねぇそれひどくない!?」


銀八の騒ぐ声も遠くで聞こえるだけ。俺の目は窓の外へ向いていた。

いつもとなんら変わりない風景が続いている。

はぁーとなんとなく息をついた。


「…ん?あれ…」


ガタッと音を立てて俺は思わず立ち上がった。窓の外を、見つめたまま。


「沖田くん!?何してんのねえ!」
「見たらわかんだろィ」

「わっかんねーよ!いきなり授業中に走りだして、お前がバカだということ以外何もわかんねーよ!!」

決まってるだろ、
「いつも」の景色が「いつも」じゃなくなったから走ってんだよ。

ほかの誰でもない、あの不思議な引力を持つあいつのもとへ。




「境サ〜ン」

廊下の角に立ったまま、俺はひらっと手を振った。

「随分と遅い登校で」

「…意味わかんない、なんであんたがここにいんのよ」

「迎えに来たんでさァ」
「頼んでない」

不服そうに眉をひそめる境。

肩を並べて歩き出すと、更に不機嫌になった。


「どうでしたかィ、サボりは」

「サボる為に遅れたんじゃない、あんたと一緒にしないで」

ギロリと睨まれ、俺は肩をすくめた。

「あんた、授業は」
「してますぜ?『花音と触れ合う授業』」

「死ね。そしてなんで今名前で呼んだ」

「…ばれちゃった」
「殺すぞ」

ばっさり切り返す花音に、俺は気づかれないようにため息をついた。

こえぇ。

顔は可愛いのに…って、ん?


「…花音…それ…」

白い頬についた深紅の液体を、俺は指差した。
花音はそっと触れる。


「血…ですかィ?」
「多分」

自分の手ににじんだ鮮血を見ても顔色ひとつ変えないあたり、覚えがあるんだろう。

――――どんな?

普通はない、女の子が血をつけて登校して来るなんて。
でも、こいつは?

『サボる為に遅れたんじゃない』

サボる為じゃない、なら…なら…なんのため?
俺は花音を見つめた。

――そんなの、決まってらァ―
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