ドロップ

□第6戦 雨の中で
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朝からしとしとと、この時期にふさわしい雨が降り続いていた。
うっとおしい雨でぃ。

俺は水滴が滴る窓を見つめながら、机に突っ伏す。


…昨日の晩、ふと思い出したことがあった。




『例の、黒の女がまた出没した』




――――あれは、そう確か 先月の委員会――







「場所は学校の近くの2丁目の公園。

被害者はうちの男子生徒2人。…なに聞いても口わらねェから状況はよくわからねーがな」


「うーむ…奴の真意が読めんなぁトシ」


「真意なんざありゃしねーだろ。ただ暴れたいだけだ 高杉の野郎みてーにな。

全員、情報に耳を傾け……って総悟!聞いてんのかオイ!」


「うっせーな聞いてまさァ。で?誰ですかィ『例の黒の女』って」


「のっけから聞いてねーだろーがァァァァァ!」





あん時は、別に謎の女とか被害とか、全部どーでもよくて。

ただ目の前の土方を抹殺することをぼんやり考えていた。




でも

今思えばあれは……
あの「黒の女」は確か………







『3年B組の境花音』



花音………………








「総悟」


名前を呼ばれ、顔を上げた。
頭上に見知った(見飽きた)ツラがあった。

「てめえ聞こえてるからな、カッコつけて言い直すんじゃねえ」

「なんですか土方さん」



土方は黙って前の席に座る。


「最近フラフラどこ行ってんだ?」

「別に。散歩でさ」


「散歩って…どーでもいいが次の委員会はサボんなよ」



委員会。
タイムリーなその言葉に、俺はぴくりと反応した。


「委員会…またですかィ?」

「あぁ。今月の集まり」




ふーんと低く呟き、雨が叩きつける窓を見て、俺は、身を起こした。


「オイ!総悟!?」

「散歩でさァ」


制止する土方を振り切ってはしる。あぁ、どうか止めねえでくだせえ土方さん。
これ散歩だから。


『例のあいつ』に会う為の、な。
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