ドロップ
□第7戦 わかってる
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「最近よく来ますねィ」
「…別に…」
屋上で寝そべる俺達。
今はお昼の前、つまり4時限目の授業の時間だ。
俺は銀八の授業をサボって、花音の元へやって来た。
「花音はなんの授業だった?」
「知らない。直行してきた。」
「ワルですねィ」
「沖田もね」
返す声は素っ気ないが、その顔は少しだけ笑っていた。
最近、花音の表情が心なしか柔らかくなった。
猫との戯れを見られて、少し紐を緩めたのだろうか。
「あの猫…いつから居るんですかィ」
「結構前から。足を怪我してたのを、あたしが拾ったの。
かわいいでしょ。」
正直楽しそうに話す花音の方がかわいかったけど、また睨まれそうだったので口を結んだ。
俺だってバカじゃねえ学習したんだ。
「名前は?」
「………ない」
考えた事もない、と花音は首を傾げた。
「じゃ、サド丸1号で決定でさァ。」
「はぁ?あんたネーミングセンスどこに落としてきたの」
「今朝登校途中の駄菓子屋でねィ…」
「今すぐ拾ってこい。」
よくまあこんなポンポン軽口たたけるもんだ、最初の頃からは想像もつかねえが、いや、口は初めからよく回ってたな。
今までの数々のえぐられた台詞を思い出す。
いや、こいつ実はめっちゃ頭の回転はやいんじゃね?
どうやったらこんな一言で毎回確実に俺の心を抉りとっていけるんだ?
「とにかく、こいつはサド丸1号で決定でさぁ」
「サドまる…」
もう若干なにか呆れたような目で見つめる花音。
本当はサド丸1号は前捕まえたバッタなんだけど。
花音の可愛がってる猫とあらば、譲ってやらァ。
「いいだろィ」
「どこが。」
「俺が付けてやったんだぜィ?いい記念じゃねーか。」
「………」
花音は、じっと何かを考えて――――
小さく頷いた。
「わかった。サド丸」
黒い瞳を覗き込んだ。
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