ドロップ

□第8戦 猫そっちのけ
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「先日、校舎裏の小屋の一部が破壊されているのが発見された。」


会議室に、土方さんの声が響く。

形式ばった委員会は、正直好きではなかった。
そっとため息をつく。

「誰かによる破壊と見てちげーねェが、高杉の野郎は停学中だ。」

ぐるりと辺りを見回す土方を、俺は睨みつけた。


「……何が言いたいんでィ」
「わかるだろ。今んなことするのは、奴しかいねー。

例の女の仕業だ」


胸くそわりぃ。

確かに、花音のした可能性は否定できない。俺だって、そう思う。
―――でも。

「別にいいじゃないですか。
俺達がこんなとこで話し合うことじゃねェ」

「奴が乱しているのは学校の風紀だ。それを押さえ込むのが俺達の仕事だろ」

俺と土方の視線がかちあう。
眼にありったけの怒りと殺意を込めた。


「まぁまぁトシ、確かに奴の行動やその動機については不明な点も多い。

総悟の言うことも一理あるかもしれんぞ」


俺達の間に近藤さんがわって入る。かねてより自分に甘い男の仲介に、ほら見ろ、と俺は顎をしゃくった。

「近藤さん、アンタは人が良すぎるんだ。
奴みたいなのに付け込まれる」

「どーゆー意味だよ」

かっと頭に血がのぼり、野郎の胸倉をつかんだ。


「もっかい言ってみろ」
「総悟、お前何を考えてる」

「別に何も。

ただよく知りもしない人の事をこんなふうに陰で話し合うのが嫌いなだけでさぁ」

ばっと腕を離すと、土方がよろめいた。

「やってられやせん。今日はもう帰りますね」

「おいコラ総悟!どこ行くんだ!!」

「トシ」


部屋を出た俺を追おうとした土方を、近藤さんが止める。

頭をふり、角を曲がったところで走り出した。
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