ドロップ

□第18戦 開戦
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「なんでィ」
「なんでィ、じゃなくてね。自覚あるでしょ沖田くん。

最近授業サボりまくりじゃねーか」

「してますよ。愛の営みでさァ」

「ななにおぅ!?
まさかお前毎回毎回どっかの女とヤって」
「人聞きわりーな死ね変態教師」

「じゃなんだってんだよ。」
「だから、愛の触れ合い」

「不良少女をつかまえて?」

黒板にもたれ掛かった銀八の口から放たれた言葉に、俺は瞳孔を開いた。

図星か、と口角を上げた銀八に静かに寄る。

「銀八ィ…てめーなんで知ってんだ…」
「まーまーそれは教師の特権つーことで」


ヘラヘラと笑ってみせる銀八。
俺はさらに近づき、鼻がつきそうな距離でひたと止まった。


「銀八よォ………

あんたがどこでそんな情報仕入れたのか知りやせんがね

よく知りもしねーで人のこと不良だなんだ言うんじゃねェよ………

てめェにあいつのなにがわかる」

「じゃあお前は何がわかってるんだ」

「少なくとも俺ァあいつが不良だとは思わねェ」


ただ自分の優しさにひねくれてるだけだ。
ただ、人よりも護りたい意志が強いだけだ。

本当にいけないのは、
そんな変わり者を『不良』として一方的に関わりをとざした、世に言う『優等生』じゃねェのか。


「適当なこと言わせねーぞ、俺たちは―――俺たちはそんなんじゃねーんだ」


はっきりと言い放つと、銀八は死んだような目に一瞬の光を宿した。

「ふぅーん…そうかい。
ちょっと見ねーうちにそこまでの交流をしてたとはねえ。

わかった、わかった。
なら証明してみろ、お前のその言葉 信じてやるからよ」

「は?証明?」


銀八は指をたて、にっと笑ってこう言った。


「よかったな、愛しの彼女ちゃんとの営みの時間が濃密になるかもしれねーぜ」


訳のわからない言葉を残し、銀八はふらふらと教室を出ていった。


「……で、結局なにが言いたかったんでィ」


黒板の前で一人立ち尽くす俺のつぶやいた声に答えてくれるものは、誰もいなかった。
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