人の血 鬼の血 徒然編

□第17章 宴ノ女王
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ガララララ!

「こんばんはぁー!」


戸を開けるなり叫んだ千鶴。

その姿があまりに勇ましくて、俺は目眩がした。


「おぉ〜千鶴ちゃんか!こっちに来なさい!」


満面の笑みで迎えた近藤さんのもとへ駆け寄る千鶴。

土方さんは少しぎょっとして煙草をふかし、それから呆れたように目をふせた。

一方隊士たちは突然乱入してきたあどけない少女に目を見開き、ぽかんとしている。

「え〜みんな聞いてくれ!

前にも一度屯所に来たのだが、先日トシと総悟が保護した娘だ」


「鬼城千鶴です!」



ぺこり、と頭を下げた千鶴に隊士のひとりが恐る恐る声をあげた。


「この前の…ミントンの子じゃないのか!?」

「あぁほんとだ、言われてみれば…!」

「ミントンの人だ!」


ミントン、ミントンと繰り返す群に、千鶴はすぅと息を吸った。



「だまらっしゃぁぁい!

誰がミントンだ!千鶴様とお呼び!」

「っ……うるせーな」


隣でものすごい大きさで叫ばれた土方は眉をひそめてつぶやいたが、それはすぐに 隊士たちの歓声に掻き消された。


「「千鶴さま、バンザーイ!!」」


なにこれ、気持ち悪!
一体なんの宗教だよ。

あーヤダヤダ、女に飢えた男所帯はハイエナの縄張り同然でさぁ。


「女の子だ女の子!」

「今夜は飲むぞぉ!」


盛り上がる隊士たちは杯を高く掲げ、声をそろえた。


「「かんぱーい!!」」


ぐいっ、ぐいっと飲み干す音。

次に上司に酒をと、近藤さんや土方、俺のところに注ぎにきた。



「ささ、どうぞ局長!」


「沖田さんもどうですか!」


「ん。」



注がれた杯を唇にあて、隙間から流し込むようにして味わう。

……あー、いい安酒だ。


と、目をあけると、早くも少し酔いがまわった何人かの隊士が千鶴にすりよっていた。



「千鶴さんもどうぞ!」


「おいしいっすよ!」


「オイこら、てめぇらそいつァ病み上がりだし未成年だから……」



言いかけて

俺は思考が停止するのを感じた。


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