人の血 鬼の血 徒然編

□第18章 ドウシヨウ
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「ほいじゃあ行ってきまさァ」
「いってきまーす、副長」

「遊ぶんじゃねーぞ」


門に立ち紫煙をはき出す副長に手を振りながら、あたしは沖田隊長のあとをちょこちょこついていった。

外の空気がおいしい。並んだ肩は触れそうなほど近くて。

幸せだ…。



「いつも警邏って一人なの?」
「いや、何人かで行くのが基本でさァ。

でも俺は一番隊の隊長だし、今日は元々お前と行くつもりだったからよ」

「そっかー」



どうしてあたしと行こうと思ってくれたのかは知らない。

ただ一緒にいられるのがうれしい。
初めてだ、こんな気持ち。

早く立ち去らなければいけないのに、ついもっともっとと思ってしまう。

制御を知らない感情は、全てを抑えて生きてきたあたしには少し怖かった。


「腹減ったな……
なんか食いましょうや」

「うん」


それでも一緒にいたい。だが許されない。

きっと慣れない生活に、少し気持ちがゆるくなってるだけだ。

微かに胸をかすめた予感に気づかないふりをして、あたしはそう結論づける。


きっと、そう。言い聞かせてわたしは隊長に笑顔を向けた。


「今日は千鶴のおごりな」

「え゙!?やだよここは隊長でしょ!」

「なんで俺なんでィ」


心底驚いたような顔をされる。
いやいや、おかしいよね?

「お、着いたぞ」

立ち止まる隊長にぶつかりそうになるも、なんとか踏み止まったあたし。
目の前の店に、動きが止まった。


「あ……ここ」
「ん、団子屋」

どかっと椅子に座る隊長の隣に、静かに腰を下ろした。

「おばちゃーん、みたらし10本頼まァ」

「え…10本?
それ隊長のおごりだよね?」

「は?お前に決まってんだろ」


いやいやいや!

いやぁぁあ!じゅっぽん!じゅっぽんて!!!


「だから男でしょ!こういうのは!」

「そんな定義知りやせん、そーゆー時代錯誤な上から目線の女が近頃は多くていけねぇや」

ポーカーフェースで取り合ってくれない。

しかもおばちゃんは上機嫌で店の中に入っていった。


「ちょっ、勘弁してよ!

あんた幕臣でしょ!?それなりに稼いでるでしょうが!」

「なんのことでィ」

小首を傾げる隊長は正直とってもかわ…いや、じゃなくて!
ばっくれた!ばっくれたよこいつ!

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